消費者被害防止ネットワーク東海とファビウス株式会社との間の訴訟に関する控訴審判決の確定について

差止請求詳細

事業分類

卸売業,小売業

事業者等名

ファビウス株式会社

事案の内容

 本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人消費者被害防止ネットワーク東海(以下「消費者被害防止ネットワーク東海」という。)が、インターネットによる通信販売業等を営み健康食品「すっきりフルーツ青汁」(以下「本件商品」という。)を販売するファビウス株式会社(以下「ファビウス」という。)に対し、「ラクトクコース」と呼称される本件商品の購入契約(以下「本件契約」という。)は、実際は本件商品を最低4回は継続して購入することを条件として初回については本件商品を定価から84パーセント割引した価格で購入できるものであるが、被告が現に行う表示は、本件商品を1回だけ購入する契約であるかのように装い、また、最低4回は継続購入する契約であるから、1回当たりの平均支払金額よりも初回の支払金額を低額とする必要性及び合理性がないにもかかわらず初回の支払金額を強調して表示するものであり、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)第5条第2号(※)に規定する有利誤認表示に該当するとして(以下「本件請求1」という。)、景品表示法第30条第1項第2号(※)の規定に基づき、別紙における「1」に記載の表示(以下「本件表示1」という。)の差止めを求めた事案である。
 原判決(名古屋地方裁判所が令和元年12月26日に言渡し)が、消費者被害防止ネットワーク東海の請求を棄却したところ、消費者被害防止ネットワーク東海が原判決後にファビウスが本件表示1の一部を変更した内容が初回分の支払金額と解約が許されない期間の商品代金総額とを殊更分離して表示するものであり、景品表示法第5条第2号に規定する有利誤認表示に該当するとの主張(以下「本件請求2」という。)を追加し、別紙における「2」に記載の表示(以下「本件表示2」という。)の差止も求めて控訴した(以下、消費者被害防止ネットワーク東海を「控訴人」、ファビウスを「被控訴人」という。)。


(※)景品表示法
(不当な表示の禁止)
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
 一  〔略〕
 二  商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
 三  〔略〕


第三十条 消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第二条第四項に規定する適格消費者団体(以下この条及び第四十一条において単に「適格消費者団体」という。)は、事業者が、不特定かつ多数の一般消費者に対して次の各号に掲げる行為を現に行い又は行うおそれがあるときは、当該事業者に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為が当該各号に規定する表示をしたものである旨の周知その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。
 一 〔略〕
 二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示をすること。
2・3 〔略〕
(注)上記の訴訟が提起された日現在の規定

差止請求根拠条文

不当景品類及び不当表示防止法

結果

 名古屋高等裁判所は、令和3年9月29日、控訴人の控訴を棄却する判決を下した(控訴人は、令和3年10月12日付けで最高裁判所に上告状兼上告受理申立書を提出した。)。控訴審における本件請求2に関する追加請求については以下のとおり。

 最高裁判所に行った上告及び上告受理申立てについて、令和4年3月31日に、それぞれ上告棄却及び申立て不受理の決定がされ、差止請求を棄却した控訴審判決が確定した。

当該裁判の主たる争点

ア 本件の争点
 本件商品をラクトクコースで購入する際の初回の購入金額を低額にする表示が、景品表示法第30条第1項第2号に規定する有利誤認表示に当たるか。

イ 控訴審における裁判所の判断の概要
 本件表示2に含まれている申込内容を確認する画面(以下「本件申込内容確認画面2」という。)における初回分の支払金額の表示(控訴審における追加請求)について
 ㈠ 被控訴人は、控訴人の当審における訴えの変更を許さない旨の裁判を求めるが、控訴人が当審において追加した本件請求2は、その内容からして、被控訴人が本件表示1の一部を変更したことに対応して本件請求1を補充したものと認められるから、請求の基礎(民事訴訟法143条1項)に変更はなく、これにより著しく訴訟手続を遅滞させることとなるともいえず、また、控訴人が本件提訴に先立ち被控訴人に対してした書面による差止請求の趣旨は、本件請求2も包摂するものといえるから、上記訴えの変更は適法と認められる。
 ㈡ 控訴人は、申込内容確認画面の重要性を理由に、本件申込内容確認画面2において、初回分の商品代金のみが黒色の枠に囲われて表示され、それ以外は枠の外に分離され、かつ、より小さいフォントで表示されていることをもって、一般消費者をして本件契約が初回1回だけの契約(お試し購入)であると誤認させると主張する。
 しかし、黒色の枠に囲われた初回分の商品代金のすぐ下に2回目以降の商品代金等が表示され、両者が殊更に分離されているとは認め難いし、既に判示したように、本件表示2全体の表示内容や表示方法等に照らせば、本件申込内容確認画面2の表示をもって、一般消費者をして本件契約が初回1回だけの契約(お試し購入)であると誤認させるものとは認め難い。
 ㈢ 控訴人は、被控訴人が消費者庁のガイドラインを熟知しながら、かたくななまでにそれに沿った明確かつ容易に理解できる表示に変えようとせず、原審口頭弁論終結後、従前の申込内容確認画面よりもさらに一般消費者に誤解を生じさせやすい表示に変更しているとして、今後も「有利誤認表示」をするおそれがあると主張するが、既に判示したとおり、被控訴人が現に有利誤認表示をしているとは認められないから、控訴人の主張はその前提を欠くものであり、また、既に判示したところから、被控訴人が今後も「有利誤認表示」をするおそれがあるとは認め難く、これを認めるに足りる証拠もない。

ウ 結論
 よって、控訴人の本件請求1は理由がないから、これを棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、また、控訴人の当審における追加請求(本件請求2)も理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。

参考資料

判決日・事案終了日

令和4年3月31日

ステータス

終了

適格消費者団体

消費者被害防止ネットワーク東海

お問い合わせ先

052-734-8107

その他

-

消費者庁公表資料

この事案の経過