消費者被害防止ネットワーク東海とファビウス株式会社との間の訴訟に関する判決について

差止請求詳細

事業分類

情報通信業

事業者等名

ファビウス株式会社

事案の内容

 本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人消費者被害防止ネットワーク東海(以下「原告」という。)が、インターネットによる通信販売業等を営み健康食品「すっきりフルーツ青汁」(以下「本件商品」という。)を販売するファビウス株式会社(以下「被告」という。)に対し、「ラクトクコース」と呼称される本件商品の購入契約(以下「本件契約」という。)は、実際は本件商品を最低4回は継続して購入することを条件として初回については本件商品を定価から84パーセント割引した価格で購入できるものであるが、被告が現に行う表示は、本件商品を1回だけ購入する契約であるかのように装い、また、最低4回は継続購入する契約であるから、1回当たりの平均支払金額よりも初回の支払金額を低額とする必要性及び合理性がないにもかかわらず初回の支払金額を強調して表示するものであり、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)第5条第2号(※)に規定する有利誤認表示に該当するとして、景品表示法第30条第1項第2号(※)の規定に基づき、別紙における「2」に記載の表示の差止めを求めた事案である(平成30年1月19日付けで名古屋地方裁判所に対して訴訟を提起)。

(※)景品表示法
(不当な表示の禁止)
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
 一  〔略〕
 二  商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
 三  〔略〕
第三十条 消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第二条第四項に規定する適格消費者団体(以下この条及び第四十一条において単に「適格消費者団体」という。)は、事業者が、不特定かつ多数の一般消費者に対して次の各号に掲げる行為を現に行い又は行うおそれがあるときは、当該事業者に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為が当該各号に規定する表示をしたものである旨の周知その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。
 一 〔略〕
 二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示をすること。
2・3 〔略〕
(注)上記の訴訟が提起された日現在の規定

差止請求根拠条文

不当景品類及び不当表示防止法

結果

 名古屋地方裁判所は、令和元年12月26日、以下のように判断した上で、原告の請求を棄却した(原告は、令和2年1月8日付けで名古屋高等裁判所に控訴した。)。

当該裁判の主たる争点

ア 本件の争点
 本件商品をラクトクコースで購入する際の初回の購入金額を低額にする表示が、景品表示法第30条第1項第2号に規定する有利誤認表示に当たるか。

イ 本件の争点についての裁判所の判断の概要
 ㈠ ① 商品の価格その他の取引条件について、実際のものよりも「取引の相手 方に著しく有利であると誤認される表示」(景品表示法第30条第1項第2号)とは、健全な常識を備えた一般消費者の認識を基準として、社会一般に許容される誇張の程度を越えて商品等の有利性があると、誤って認識される表示をいうと解する。そして、当該表示から一般消費者に認識される意味内容を検討するに当たっては、当該表示がインターネット上に存在しパソコン等の画面において表示される場合には、文言や文字等の体裁のみならず、画面の遷移等も含め、当該表示を総合的に考慮して判断すべきである。
 ② (ア) これを、被告が本件商品について現に行っている表示(以下「本件表示」という。)について検討すると、本件表示のトップ画面においては、白色背景に大きく桃色文字で記載された630円という表示が目立つが、その真横には桃色背景に白色及び黄色文字といった目立つ形で「お届け周期変更OK」という定期購入であることをうかがわせる記載があることが認められる。さらに、その直下には、本件契約の内容及びお得な点を説明した特典(以下「本件特典」という。)が記載され、本件特典の特典2から4にも、ラクトクコースが定期購入であって初回の支払金額がお得であることを示す記載があるところ、本件契約がいかなる内容の契約であるかについて関心を有する一般消費者であれば、これらの記載に目を通すことが通常想定される。この点に加えて、本件契約の申込みを行うには、本件商品の申込ボタン(以下「本件申込みボタン」という。)をクリックする必要があるところ、本件申込ボタンの真下には、ラクトクコース募集要項(以下「本件募集要項」という。)第3項として、赤字で、「初回を含め最低4回 (4か月)以上のご継続がお申込みの条件です。」と記載され、本件契約の定期購入条件が明示されているため、健全な常識を備えた一般消費者において、最低4回の継続が必要であることは容易に認識し得るといえる。
 (イ) 仮に本件募集要項等における定期購入条件に関する記載を見落とした場合であっても、本件申込ボタンをクリックした遷移先では、「ラクトクコースについて ご購入前の注意事項(必ずご確認ください)」(以下「本件注意事項」という。)が表示されることとなっている。そして、本件注意事項には 、「1回目」の支払金額として定価の「84%OFF」で「630円」の記載と「2、3、4回目」の支払金額として定価の「12%OFF」で「3480円」の記載とが別個の赤枠内に記載されているが、「特別価格コースのため、途中解約はできません。」という注記は、この点のみ背景色を黄色にして目立つように記載されており、定期購入で中途解約ができないことを明示する表示があることが認められる。  
 (ウ) したがって、本件表示を全体として考慮すると、初回の支払金額を低額にする表示が、健全な常識を備えた一般消費者をして、本件契約を初回のみの契約であると誤認させる表示であるとはいえない。
 ㈡ 以上によれば、本件商品をラクトクコースで販売する際に初回の支払金額を低額にする表示が、景品表示法第30条第1項第2号に規定する有利誤認表示に当たるとはいえない。

ウ 結論
 よって、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとする。

参考資料

判決日・事案終了日

令和元年12月26日

ステータス

終了

適格消費者団体

消費者被害防止ネットワーク東海

お問い合わせ先

052-734-8107

その他

-

消費者庁公表資料

この事案の経過