京都消費者契約ネットワークとサン・クロレラ販売株式会社の判決について

差止請求詳細

事業分類

製造業

事業者等名

サン・クロレラ販売株式会社

事案の内容

 本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人京都消費者契約ネットワーク(以下「原告」という。)が、健康食品の小売販売等を目的とするサン・クロレラ販売株式会社(以下「被告」という。)に対し、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」という。)第10条第1号等の規定に基づき、被告が自ら又は第三者をして健康食品の効能等を表示する行為の差止め等を求めた事案である(平成26年1月17日付けで京都地方裁判所に訴えを提起。本判決後、被告は大阪高等裁判所に控訴している。)。

 (争点)
① 新聞折込みチラシの配布主体について
 不特定多数の消費者に向けた商品の薬効を説明した新聞折込みのチラシ(以下「本件チラシ」という。)が定期的に配布されているところ、本件チラシが被告により配布されたものかどうか。

② 本件チラシの商品表示該当性について
 本件チラシは、被告が販売する商品(以下「被告商品」という。)の品質や内容を表示するものとして配布されるものであるかどうか。

③ 本件チラシの優良誤認表示該当性について
 本件チラシの内容は、実際のものよりも著しく優良であると誤認される表示であるかどうか。

差止請求根拠条文

不当景品類及び不当表示防止法

結果

 京都地方裁判所は、平成27年1月21日、上記の争点について、それぞれ以下のとおり判断した。

当該裁判の主たる争点

ア 争点①について(新聞折込みチラシの配布主体について)
 被告が配布主体と主張する団体(以下「研究会」という。)の広報活動費用等の費用を被告が負担していることや、研究会に資料請求すると、資料のほかに被告商品のカタログや注文書が送付されてくるなどの事実関係に照らせば、研究会が被告とは別個の組織として、被告から独立して存立しているとは考え難く、被告商品の宣伝広告活動を行う被告の組織の一部門にすぎないと考えるのが合理的である。

イ 争点②について(本件チラシの商品表示該当性について)
 営利法人による新聞折込みチラシは、通常その商品の販売促進を目的とするものと考えられること、及び本件チラシは研究会が推奨する商品の購入を強く誘導するものであり、研究会が購入を推奨するのは被告商品のみであることから、本件チラシは被告商品の内容に関する表示と認められる。
 なお、被告は、本件チラシには一般的な原材料の記載はされているものの、被告商品の商品名の記載がないから、被告商品の内容を表示するものではないと主張するものの、景表法による不当表示に対する規制は、商品を購入させるための不当な誘導を社会から排除し、一般消費者の適正な商品又は役務の選択を確保することを目的とするから、ある広告に、字面上商品名が記載されていないとしても、その一事から当該広告は商品表示ではないとして規制対象から外すのは相当ではない。
 これを本件チラシについてみるならば、そこに記載された様々な効用に関心を抱いた顧客は必然的に被告商品の購入を勧誘されるという仕組みが取られているのであるから、本件チラシの記載を被告商品に関する表示とみなければならず、被告の主張は採用できない。

ウ 争点③について(本件チラシの優良誤認表示該当性について)
 我が国では、薬事法が制定された昭和35年以降、医薬品は厳格に規制され、国による厳格な審査を経て承認を得なければ製造販売することはできず、承認を受けていない医薬品は、医薬品的な効能効果を表示することが刑罰をもって禁止されてきたのであるから、医薬品としての承認がされていない商品について医薬品的な効能効果が表示されている場合、当該表示は、一般消費者に対して当該商品があたかも国により厳格に審査され承認を受けて製造販売されている医薬品であるとの誤認を引き起こすおそれがあるから、優良誤認表示に当たると認めるのが相当である。
 本件チラシの表示内容のうち、被告が販売する商品の服用により症状が改善したとの体験談を記載した部分については、人の疾病を治療又は予防する効能効果があることを暗示するものであり、一般の消費者に対して被告商品が医薬品であるとの誤認を引き起こすおそれがあるから、医薬品的な効能効果があると表示するものであり、また、それ以外の記載、すなわち「薬効のある食品であること」や「病気と闘う免疫力を整える」といった記載についても、人の疾病の治療又は予防を目的とする効能効果があることや、単なる栄養補給や健康維持を超え、身体の組織機能の意図的な増強増進を主たる目的とする効能効果があることを標榜するものであることは明らかであり、一般の消費者に対して被告商品が医薬品であるとの誤認を引き起こすおそれがあるから、医薬品的な効能効果があると表示するものである。
 以上のとおり、本件チラシには、医薬品としての承認を受けていない被告商品につき医薬品的な効能効果があると表示するものであり、一般の消費者に対し、被告商品があたかも国により厳格に審査され承認を受けて製造販売されている医薬品であるとの誤認を引き起こすおそれがあり、また、このような表示は、商品の宣伝広告として社会一般に許容される誇張の限度を大きく踏み越えるものであって、本件チラシは景表法第10条第1号に規定する「商品…の内容について実際のもの…よりも著しく優良であると誤認される表示」として優良誤認表示に当たる。

参考資料

-

判決日・事案終了日

平成27年1月21日

ステータス

終了

適格消費者団体

京都消費者契約ネットワーク

お問い合わせ先

075-211-5920

その他

-

消費者庁公表資料

-

この事案の経過