京都消費者ネットワークと株式会社長栄の控訴審判決の確定について

差止請求詳細

事業分類

不動産業,物品賃貸業

事業者等名

株式会社長栄

事案の内容

 本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人京都消費者契約ネットワーク(一審原告)が、不動産賃貸業及び不動産管理業を目的とする事業者である株式会社長栄(以下「長栄」という。)(一審被告)に対し、別紙1記載の内容の条項(以下「定額補修分担金条項」という。)が消費者契約法第10条に反して無効であるとして、①消費者との間で建物賃貸借契約を締結し、又は合意更新するに際し、定額補修分担金条項を含む意思表示をすることの差止めを求めるとともに、②定額補修分担金条項が記載された契約書用紙の破棄、③その従業員らに対し上記意思表示を行うための事務を行わないこと及び前記契約書用紙を破棄すべきことの指示、④予備的請求として、③を従業員に周知徹底するためにその旨記載した書面を従業員に対し配付することを求めた事案の控訴審において、判決の言渡しがなされたものである。
 原審では、①のうちの、建物賃貸借契約を締結する際の定額補修分担金条項を含む意思表示をすることの差止めを請求する部分について容認したが、③の前段については却下し、①、③のうちのその余の請求及び②、④の請求を棄却した。一審原告は、①、③のうちその従業員らに対し上記意思表示を行うための事務を行わないよう指示すること、④のうち上記意思表示を行うための事務を行わないことを従業員に周知徹底するためにその旨記載した書面を従業員に対し配付することを求め、一審被告はその敗訴部分のすべてを不服として控訴した(平成21年10月9日に1審被告が、平成21年10月13日に一審原告が、大阪高等裁判所に対して控訴。)。

差止請求根拠条文

消費者契約法第10条

結果

 大阪高等裁判所は、平成22年3月26日、一審原告の控訴を棄却し、一審被告の控訴に基づき、③のうちその従業員らに対し上記意思表示を行うための事務を行わないよう指示することを棄却し、その余の控訴を棄却した。

当該裁判の主たる争点

 ①について、定額補修分担金条項が消費者契約法第10条に反するかについては、「定額補修分担金条項は、民法の規定の適用による場合に比して、賃借人の義務を加重する条項であるということができる」とし、さらに、「定額補修分担金の額が賃借人にとって有利な額である場合が観念的にはあり得るとしても、本件における定額補修分担金条項は、信義則に反して消費者を一方的に害する条項であるということができる」として、原判決を維持した。また、差止めの要件を満たすかについては、原判決と同様、「消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を現に行い又は行うおそれがあるとき」に当たるとし、一律の差止めが相当であるとしたうえで、合意更新の場合にも差止めができるかについて、「定額補修分担金の支払を新規契約において合意した当事者が、合意更新をする際において、改めて定額補修分担金の支払及び履行を確認した上で、さらにその不返還を合意するというような意思表示が含まれていると解することはあまりにも技巧的に過ぎ、困難というほかはない。合意更新の際には、定額補修分担金条項のうち、3項に関する特約部分である「賃貸人は故意、重過失による損耗を除く原状回復費用を請求しない」という特約部分のみが、同じ内容で合意されているものと解すべきであるが、一審原告が差止めを請求しているのは、定額補修分担金条項のすべてを使用する場合のみであると解され、同条項の3項の部分についてのみを差止めの対象としているものではないことも明らかである」とし、「合意更新の際には一審原告の主張する定額補修分担金条項を含んだ契約の申込み又はその承諾の意思表示があるものとは認められない」として、建物賃貸借契約を締結する際の定額補修分担金条項を含む意思表示をすることの差止めを請求する部分についてのみ認容した原判決を維持した。
 ③のうちその従業員らに対し上記意思表示を行うための事務を行わないよう指示することについては、「一審被告のすべき指示が、事業者の労働者に対して有する労働義務遂行に際しての指揮命令権に基づく義務上の指示を意味するものであるから、従業員177名ほどを擁する一審被告の事業規模(甲16)においては、そのような業務上の指示は、上記指示を記載した各従業員に対する書面の配布もしくは社内メールの送信などによって行われるべきことは当然予想されることであるから、このような作為を求めたとしても、その履行の有無について判別できないようなことは想定し得ないので、上記請求自体は特定性に欠ける点はないというべきである」とし、請求は適法であるとした。
 そして、長栄は「平成19年7月以降に、定額補修分担金条項を含む賃貸借契約の締結を廃止し、2年近くもの間一審被告において定額補修分担金条項が使用されていないことからすると、同条項を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示をしないことを従業員らにも周知徹底したことが認められるので、新たに従業員らに指示して、今後同条項を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示を行わしめることがない限り(この点は、すでに請求されている一審被告に対する意思表示等の差止めに当然含まれているものである。)、上記意思表示をしないことなどを記載した書面の一審被告の従業員らへの配布や上記意思表示を行うための事務を行わないことの指示を命ずる必要性までは認められず、上記請求には理由がない」として、③のうちその従業員らに対し上記意思表示を行うための事務を行わないよう指示することについて、原判決を変更して棄却し、④について請求を棄却した原判決を維持した。

参考資料

判決日・事案終了日

平成22年3月26日

ステータス

終了

適格消費者団体

京都消費者契約ネットワーク

お問い合わせ先

075-211-5920

その他

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消費者庁公表資料

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この事案の経過