京都消費者契約ネットワークと株式会社長栄の判決について

差止請求詳細

事業分類

不動産業,物品賃貸業

事業者等名

株式会社長栄

事案の内容

 本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人京都消費者契約ネットワーク(原告)が、不動産賃貸業及び不動産管理業を目的とする事業者である株式会社長栄(以下「長栄」という。)(被告)に対し、別紙1記載の内容の条項(以下「定額補修分担金条項」という。)が消費者契約法第10条に反して無効であるとして、①消費者との間で建物賃貸借契約を締結し、又は合意更新するに際し、定額補修分担金条項を含む意思表示をすることの差止めを求めるとともに、②定額補修分担金条項を含む契約書用紙の破棄、③その従業員らに対し上記意思表示を行うための事務を行わないこと及び前記契約書用紙を破棄すべきことの指示、④予備的請求として、③を従業員に周知徹底するためにその旨記載した書面を従業員に対し配付することを求めた事案である(平成20年3月25日、京都地方裁判所に対して訴えを提起。)。

差止請求根拠条文

消費者契約法第10条

結果

 京都地方裁判所は、平成21年9月30日、以下のとおり判決を言い渡した。

当該裁判の主たる争点

 ①について、まず、定額補修分担金条項が消費者契約法第10条に反するかについては、当該条項により「結局、賃借人の軽過失による損耗の原状回復費用が、支払った定額補修分担金の額に満たない場合には、賃借人は本来負担しなくてもよい通常損耗の原状回復費用を負担させられることになる。相当額の通常損耗の発生が不可避であることも考慮すると、この点において、定額補修分担金条項は、民法の規定の適用による場合に比して、賃借人の義務を加重する条項である」ということがいえる。また、「定額補修分担金の額が賃借人にとって有利な額である場合が観念的にはあり得るとしても、定額補修分担金条項は、基本的に、信義則に反して消費者を一方的に害する条項であるということができる」とした。
 そのうえで、消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を現に行い又は行うおそれがあるときといえるかについては、定額補修分担金条項について、長栄はその違法性について争っていることから、「今後、被告が定額補修分担金条項を含む消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行う蓋然性が客観的に存在するといわざるを得ない」と判断した。
 そして、一律の差止めが相当かについては、「定額補修分担金の額が、賃借人の軽過失によって生じる損耗の原状回復費用を下回る場合には、賃借人にとって有利な条項となることもあり得る」が、「被告において、賃借人の利益になる態様で、定額補修分担金条項を運用していた例があるとは到底認められず」、「今後とも、被告において消費者契約法10条に反する態様で定額補修分担金が運用されるものと考えざるを得ず、その額を問わず一律に当該条項自体の使用を差し止めるのが相当である」とした。

 なお、合意更新の場合、場合によっては「定額補修分担金条項を含む意思表示をすることも観念できないではない。しかし、被告において、合意更新時に定額補修分担金条項を含む意思表示をしたことがあることを窺わせる証拠もなく、今後の合意更新時において被告がそのような意思表示を行うおそれがあるとも認められない」として、合意更新時における差止請求には理由がないとした。
 ②及び③の後段につき、「弁論の全趣旨より、以前使用されていた定額補修分担金条項が記載された契約書雛形が印刷された契約書用紙は全て破棄され、備え置きがないことが窺われ、他に上記用紙が存在することを認めるに足りる証拠もない」として、本件請求に係る原告の訴えを棄却した。
 ③の前段については、「事業者に対して特定の作為を求める給付の訴えであるから、請求の内容が一義的に明らかにならなければ、事業者としてはどのような措置をとれば法的義務を履行したことになるのか不明であるし、強制執行をする際にも支障が生じるから、不適法である」として却下した。
 ④につき、長栄は、「平成19年7月以降に、定額補修分担金条項を含む賃貸借契約の締結を廃止し、同条項を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示をしないことを従業員らにも周知徹底したことが認められ、2年近くもの間被告において、定額補修分担金条項が使用されていないことからすると、被告に対して同条項を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示の差止めをする以上に、上記意思表示をしないことなどを記載した書面の従業員らへの配付を命ずる必要性までは認められ」ないとして、棄却した。

参考資料

判決日・事案終了日

平成21年9月30日

ステータス

終了

適格消費者団体

京都消費者契約ネットワーク

お問い合わせ先

075-211-5920

その他

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消費者庁公表資料

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この事案の経過