消費者支援機構関西と株式会社スターリーナイトカンパニーとの間の共通義務確認訴訟に関する判決の確定について

被害回復裁判詳細

事業分類

生活関連サービス業,娯楽業

事業者等名

株式会社スターリーナイトカンパニー

事案の内容

 本件は、特定適格消費者団体である特定非営利活動法人消費者支援機構関西(以下「原告」という。)が、株式会社スターリーナイトカンパニー(以下「被告」という。)に対し、被告が大阪市内の公園で主催したイベント(以下「本件イベント」という。)が中止されたことにより、本件イベントに参加する目的で被告にチケット代金を支払った者及び過去に他のイベントに参加する目的で被告にチケット代金を支払ったが、チケット振替契約により本件イベントに参加する権利を取得していた者(別紙対象消費者目録記載の対象消費者。以下「本件各対象消費者」という。)に対する被告の債務が履行不能となったと主張し、被告に対し、以下の確認を求める共通義務確認の訴え(特例法第2条第4号)※3を提起した事案である。
(1)主位的請求
 ・特例法第3条第1項第3号※1に基づき、被告の債務不履行を理由とする損害賠償義務として、被告が本件各対象消費者に対し、チケット代金相当額の支払義務、本件各対象消費者が原告に支払うべき報酬及び費用相当額の支払義務を負うことの確認
 ・これらに対する本件各対象消費者が履行請求をした日の翌日から各支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払義務を負うことの確認
(2)予備的請求
 ・特例法第3条第1項第2号※2に基づき、原状回復義務(予備的請求1)又は不当利得返還義務(予備的請求2)として、被告が本件各対象消費者に対し、チケット代金相当額の支払義務を負うことの確認
 ・これらに対する本件各対象消費者が履行請求をした日の翌日から各支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払義務を負うことの確認
 大阪地方裁判所は、令和7年11月7日、以下のとおり判決を言い渡した(同月26日、原告・被告双方が控訴せず判決確定。)。

(※1・2・3)消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 一~三 [略]
 四 共通義務確認の訴え 消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害について、事業者が、これらの消費者に対し、これらの消費者に共通する事実上及び法律上の原因に基づき、個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて、金銭を支払う義務を負うべきことの確認を求める訴えをいう。
 五~十 [略]

(共通義務確認の訴え)
第三条 特定適格消費者団体は、事業者が消費者に対して負う金銭の支払義務であって、消費者契約に関する次に掲げる請求(これらに附帯する利息、損害賠償、違約金又は費用の請求を含む。)に係るものについて、共通義務確認の訴えを提起することができる。
 一 [略]
 二 不当利得に係る請求
 三 契約上の債務の不履行による損害賠償の請求
 四 [略]
2~4 [略]

注)上記の訴訟が提起された日現在の題名・規定

差止請求根拠条文

-

結果

確定判決の主文
(1) 原告の主位的請求を棄却する。
(2) 被告が、別紙対象消費者目録記載の対象消費者に対し、個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて、次の金銭支払義務を負うことを確認する。
ⅰ) 被告と別紙対象消費者目録記載1及び2の各対象消費者との間で締結された別紙商品目録記載の商品に係る売買契約に基づき支払われた売買代金相当額の原状回復義務
ⅱ) 被告と別紙対象消費者目録記載3及び4の各対象消者との間で締結された別紙商品目録記載の商品に係るチケット振替契約に基づき充当された代金相当額の原状回復義務
ⅲ) 前記ⅰ)及びⅱ)の原状回復義務に係る金員に対する請求日の翌日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金支払義務
(3) 〔略〕

当該裁判の主たる争点

理由
(1) 訴訟要件について
ア 多数性の要件について(特例法第2条第4号)
 開催が中止された令和3年12月17日及び同月19日の本件イベントに参加予定であった本件各対象消費者は、5773名の多数に上るところ(当事者間に争いがない。)、その後、被告は、本件各対象消費者に対して別イベントヘの振替やチケット代金の返還を申し出ており、本件各対象消費者のうち、これに応じて、振替対象とされた別イベントに参加し、あるいは、チケット代金の返還を受けた者が相当数いるであろうことは、一応是認して良い。しかしながら、本件において、そうした者の人数を具体的に把握すべき証拠はなく、仮に被告が推計するところに拠ったとしても、振替対象とされた別イベントに参加した者は約4542名であり、また、チケット代金の返還申込みをした者は約844名で、うち実際に返金を了した者は348名にとどまるというのであるから、本件口頭弁論の終結時点では、本件各対象消費者のうち、なお数百名という規模の者が本件訴えの対象となる消費者として残ることになる。
 特例法は、消費者の財産的被害を集団的に回復することで、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするところ、特例法が定める消費者団体訴訟制度は、消費者と事業者との間に情報の質や量、交渉力の格差があること、訴訟には相応の時間、費用及び労力がかかり、少額被害の回復に見合わない場合があること、個々の消費者と事業者間の訴訟等を通じ一定の被害回復がされたとしても、他の消費者との間で同種のトラブルがなくなるわけではなく、別途、抜本解決の選択肢を設けるべきこと等を踏まえ、内閣総理大臣が認定した消費者団体に対し、特別な権限を付与したものであって、そうした消費者団体訴訟制度の趣旨・目的を考慮すれば、特例法第2条第4号が定める「消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害等」というためには、消費者個々が訴訟を提起する場合よりも消費者団体訴訟制度を利用した方が審理の効率化が図られる程度の人数規模である必要があり、消費者数名という規模であれば不十分というべきであるが、数十名程度の消費者に被害が生じた場合であれば、先の趣旨・目的に十分適うところといって良く、本件訴えは、「相当多数の消費者」に生じた財産的被害等に関するものといえるから、特例法第2条第4号の多数性の要件を満たすと認められる。
イ 共通性の要件について(特例法第2条第4号)
 本件各対象消費者は、前記3日間の本件イベントのチケットを購入したか、あるは、過去に他のイベントのチケットを購入したものの、チケット振替契約により前記3日間の本件イベントヘの参加権を取得した者であって、各々の請求を基礎付ける事実関係は、主要部分においていずれも共通しているといえる。また、その基本的な法的根拠についても、本件イベントの中止により被告の本件イベントを開催する債務が履行不能になったことに基づき、チケット代金相当額の損害賠償請求権、原状回復請求権又は不当利得返還請求権を取得したとするものであって、共通性があると認められる。したがって、本件各対象消費者の被告に対する前記の各請求権は、 いずれも共通する事実上及び法律上の原因に基づくものであって、本件訴えは、特例法第2条第4号の共通性の要件を満たすと認められる。
ウ 支配性の要件について(特例法第3条第4項)
 簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であるとして、特例法第3条第4項に基づき共通義務確認の訴えを却下し得るのは、個々の消費者の対象債権の存否及び内容に関して審理判断をすることが予想される争点の多寡及び内容、当該争点に関する個々の消費者の個別の事情の共通性及び重要性、想定される審理内容等に照らして、消費者ごとに相当程度の審理を要する場合であると解される。
 この点に関し、被告は、本件各対象消費者のうち、振替対象とされた別イベントに参加した者の中には、本件イベントのチケットを転売した者や、直接会場に来てその場で振替を求めてきた者等がおり、被告において、どの者がそうした別イベントに参加したかを正確に把握できていないことを指摘し、簡易確定手続における審理判断に相当の時間を要すると主張する。しかしながら、本件において、被告指摘の事情があることを認めるべき的確な証拠はない上、仮に、本件各対象消費者のうち、被告が別イベントへの振替を案内する際に用いた申請フォーム等以外の方法により、個別に、別イベントへの振替を申し出てこれに参加した者が一定数存在するにせよ、そうした例外的な取扱いを含めて所要の手続を行ったのは、被告自身であり、被告が振替手続を行った者に関する情報を何ら所持していないとは容易に考え難いというべきであって、被告が振替対象とされた別イベントに参加した者の人数について具体的な推計を試みているところも、これにそう。以上によれば、被告指摘の点をもって、本件につき簡易確定手続で対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であるとは認められず、その他本件において、これを認めるべき十分な証拠はない。
 したがって、本件訴えは、特例法第3条第4号の支配性の要件を満たすと認められる。
(2) 主位的請求について
ア 履行不能について
 本件イベントは、令和3年12月17日から同月19日までの3日間という特定の日に、大阪市住之江区内の住之江公園という特定の会場で、開催予定であったイベントである。本件イベントヘの参加に当たっては、前記3日間のうち特定の1日を対象とするチケットを購入する必要があったこと、本件イベントには「空飛ぶクリスマスツリー」というイベント名が冠され、その企画内容も、会場でクリスマスマーケット等を行いつつ、参加者がランタン・リリースを行うものであったことに照らし、本件イベントについては、単に開催概要として一定の日時場所が予定されていたというにとどまらず、クリスマスを間近に控えた前記3日間という特定の日にイベントを開催することを本質的要素とするもので、前記3日間での開催それ自体が被告の債務となっていたというべきである。
 したがって、被告が同月17日及び同月19日の本件イベントを中止した以上、前記各日の本件イベント開催に関する被告の債務は、いずれも社会通念上履行不能になったと認められる。
 したがって、履行不能に関する原告の主張は、理由がある。
イ 被告の帰責性について
 本件イベントが相当多数のランタン・リリースを主たる企画内容とするものである以上、強風による影響を大きく受けることは容易に想定でき、あえて強風下で開催することで、近隣の人や施設等に一定の被害を与える可能性があったといい得る。また、本件イベントでは、会場内でクリスマスマーケット等の催事が行われる予定であったところ、強風下での開催により会場内のテントが倒壊するなどして、催事を安全に遂行できない可能性も否定し難いところであった。被告は、前記各日の午前中に本件イベントの中止を発表したが、各発表時点において、大阪市には強風注意報が発表されており、イベント開催の予定時刻に気象条件が好転する確たる見込みもなかったことを踏まえると、前記各日の本件イベントの中止は、合理的な見地から、安全かつ円滑なイベント開催が見込めないためにされたやむを得ない判断ということができ、そうした判断に基づく被告のイベント不開催については、被告の責めに帰することができない事由によるものと認められる。
 したがって、被告の帰責性に関する被告の主張は、理由がある。
(3) 予備的請求1について
ア 原状回復としてのチケット代金相当額の返還義務について
 被告が令和3年12月17日及び同月19日の本件イベントを中止したことにより、前記各日の本件イベント開催に関する被告の債務は、前記3(2)アのとおり、いずれも社会通念上履行不能になったと認められる。
 したがって、本件各対象消費者は、民法第542条第1項第1号により、前記各日の本件イベントに関するチケット売買契約又はチケット振替契約を無催告解除することができ、その場合に被告には解除に基づく原状回復としてチケット代金相当額を返還する義務が生じることになる。
イ チケット規約2条該当性について
 被告は、前記各日の本件イベントについて、チケット規約2条に基づき、本件イベントの中止によるチケット代金相当額の返還義務を負うことはないと主張する。
 この点に関し、チケット規約2条には、被告がイベントの運営を中止した場合にチケット代金の返還を要しない事由が具体的に列挙されているが、強風によるイベント中止の場合にチケット代金の返還を要しないことを直接規定する条項はなく、強風が不返金の対象事由となることを推知させるような文言等も存しない。
 ところで、チケット規約2条には、「その他の非常事態により、本サービスの提供が通常どおりできなくなった場合」を不返金の対象とする規定が設けられており、被告は、前記各日の本件イベントの中止がこれに該当すると主張する。しかしながら、前記両日における本件イベントの中止は、被告がイベント中止を発表した時点で、大阪市に強風注意報が発表され、イベント開催の予定時刻に気象条件が好転する確たる見込みがなかったことのみならず、本件イベントの内容が、強風による影響を大きく受けることを考慮したものである。強風注意報は、強風により災害が発生するおそれがあると予想されるときに、注意を呼びかける目的で発表される予報であり、現に災害が発生し、或いは、災害発生の具体的蓋然性が認められるような場合とはおのずから状況を異にするというべく、前記両日に大阪市に強風注意報が発表されており、本件イベントの開催が予定されていた時間帯に一定の強風が吹いていたからといって、それが直ちに前記「その他の非常事態により、本サービスの提供が通常どおりできなくなった場合」の非常事態に該当するとは認められない。本件イベントは、強風による影響を大きく受ける内容の企画であり、あえて強風下で開催することで、近隣の人や施設等に一定の被害を与える可能性があったことは認められ、チケッ卜規約2条が定める「本サービスの提供が通常どおりできなくなった場合」に該当する余地があるとはいい得るが、それが「非常事態」によるサービス提供の不能に当たるとは認められないというべきである。
 したがって、チケット規約2条該当性に関する被告の主張は、理由がない。
(4) よって、原告の主位的請求は、理由がないから棄却するべきであるが、予備的請求1は、理由があるからこれを認容することとする。

参考資料

判決日・事案終了日

令和7年11月26日

ステータス

終了

特定適格消費者団体

消費者支援機構関西

お問い合わせ先

06-6945-0729

その他

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消費者庁公表資料

この事案の経過