とちぎ消費者リンクと株式会社オアシスとの間の訴訟に関する判決について

差止請求詳細

事業分類

学術研究,専門・技術サービス業

事業者等名

株式会社オアシス

事案の内容

 本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人とちぎ消費者リンク(以下「原告」という。)が、株式会社オアシス(以下「被告」という。)に対し、被告が提供するホスティングサービスの共有レンタルサーバーの利用契約を締結するに際して利用する条項のうち、消費者が最低利用期間内に本件契約を解約した場合、被告に対して初期設定費用を支払わなければならないとする条項(以下「本件条項前段」という。)が消費者契約法(※1)第9条第1項第1号に、消費者が最低利用期間内に金銭支払債務の履行を遅滞した場合、被告に対して初期設定費用を支払わなければならないとする条項(以下「本件条項後段」という。)が同項第2号に該当することから差止めを求めるとともに、被告のウェブページ上において、最低利用期間内に解約した場合には初期設定費用を支払わなければならないにもかかわらず、いかなる場合でも初期設定費用を支払う必要がないかのような表示(以下「本件表示」という。)が、不当景品類及び不当表示防止法(※2)(以下「景品表示法」という。)第34条第1項第2号に該当することから差止め等を求めた事案である。

(※1)消費者契約法
(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
 一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
 二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
2 [略]

(※2)不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)
(差止請求権等)
第三十四条 消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第二条第四項に規定する適格消費者団体(以下「適格消費者団体」という。)は、事業者が、不特定かつ多数の一般消費者に対して次の各号に掲げる行為を現に行い又は行うおそれがあるときは、当該事業者に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為が当該各号に規定する表示をしたものである旨の周知その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。
 一 [略]
 二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示をすること。
2・3 [略]

注)上記の判決がされた日現在の規定

差止請求根拠条文

消費者契約法第9条第1項第1号、消費者契約法第9条第1項第2号、不当景品類及び不当表示防止法

結果

 宇都宮地方裁判所は、令和7年12月11日、以下のように判断した上で、原告の請求を一部認容した(本判決は既に確定している。)。

当該裁判の主たる争点

ア 争点
① 本件条項前段が「解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」(消費者契約法第9条第1項第1号)に当たるか
② 本件条項前段が「平均的な損害の額を超える」(消費者契約法第9条第1項第1号)損害賠償等を定めるものか
③ 本件条項後段が金銭の支払を遅延した場合における「損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」(消費者契約法第9条第1項第2号)に当たるか
④ 本件条項後段が消費者契約法第9条第1項第2号所定の利率を超える損害賠償等を定めるものか否か
⑤ 本件表示が有利誤認表示に該当するか

イ 裁判所の判断
(ア)争点①について
 消費者契約法第9条第1項第1号は、消費者が、消費者契約の解除に伴い、事業者から不当に損害賠償等の負担を強いられないよう定められた規定と解されることを考慮すると、「解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」に当たるかどうかは、当該条項が実質的に損害賠償額の予定又は違約金を定めたものとして機能するものかどうかによって判断すべきである。
 本件条項前段の内容を見るに、最低利用期間を設定した上で当該期間内に解約された場合に、消費者に対して金員の支払義務を新たに課すことによって当該期間内での解約を心理的に制限しようとする意図の下に規定されたとみることができる。そうすると、本件条項前段は実質的に損害賠償額の予定又は違約金を定めたものとして機能するものというべきであり、「解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」に該当する。
(イ)争点②について
 被告は原告に対して、本件条項前段が適用される場合における金額の算定根拠を回答しているが、同回答等を踏まえても解約したときに被告にどのような損害が生じるのか、損害が発生するとしてもその具体的な内容及び金額について明らかでない。
 仮に、被告に初期の設定費用等の損害が発生するとしても、被告の同業三社のレンタルサーバーの契約プランにおいて初期設定費用は0円とされており、いずれも月額料金から初期設定に要する費用等が回収されていることが窺われるが、その月額料金は被告の設定する月額料金(9800円)の10分の1以下の金額である。本サービスと上記三社のサービス内容に多少の差異がある点を加味しても、少なくとも月額料金9800円が1回支払われることで、被告は初期設定に要する費用等を全て回収することができると考えられる。そうすると、本件条項前段が定める9万9000円全額について、解約に伴って被告に生ずべき「平均的な損害の額を超える」ものといえる。
(ウ)争点③、④について
 原告は被告に対し、本件訴訟提起に先立って本件条項前段と本件表示について消費者契約法第41条第1項所定の事項を記載した書面を送付し、同書面が被告に到達した事実が認められるものの、同書面には本件条項後段に関する請求の要旨や紛争の要点は一切記載されておらず、消費者契約法第41条第1項所定の事項が記載された書面が被告に送付されたとは認められない。
 また、消費者契約法第41条第1項が差止請求において適格消費者団体に対し書面による事前の請求を義務付けた趣旨は、事業者に訴訟の可能性を理解させた上で自ら是正の機会を与えることによって紛争の早期解決と取引の適正化を図った点にあると解されるところ、最低利用期間内に消費者が本件契約を解約した場面で適用される本件条項前段と、最低利用期間内に消費者が金銭支払債務の履行を遅滞した場面で適用される本件条項後段は、その適用場面を全く異にするものであり、本件条項前段について書面による事前の請求がされたことのみをもって、被告が本件条項後段の是正の機会を与えられていたとみるのは困難である。
 なお、原告は被告に対し、事前に本件条項前段と本件条項後段含む条項の全体の削除等を求める申入書を送付しているが、消費者契約法第41条第1項の請求である旨の記載がない同書面は、上記趣旨を満たすものとはいい難い。
 そのため、本件条項後段に関する差止請求は訴訟要件を欠き不適法である。
(エ)争点⑤について
 本件表示において、最低利用期間の定めがあることや、消費者が最低利用期間内に解約した場合に初期設定費用9万9000円の支払債務が生じることが全く表示されておらず、本件表示は取引条件について実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示をするものといえることから、有利誤認表示(景品表示法第34条第1項第2号)に該当する。

ウ 結論
 本件訴えのうち、被告が消費者との間で契約を締結するに際し本件条項前段を含む契約の締結の意思表示を行うことについての差止請求及び本件表示の差止請求はいずれも理由があることから、差止め等を求めることができる。
 他方で、被告が消費者との間で契約を締結するに際し本件条項後段を含む契約の締結の意思表示を行うことについての差止請求は不適法であることから、これを却下する。

参考資料

-

参考資料ファイル名

-

参考資料表示名

-

終了日・判決日

令和7年12月11日

ステータス

終了

適格消費者団体

とちぎ消費者リンク

お問い合わせ先

028-678-8000

その他

消費者庁公表資料

この事案の経過