消費者支援ネット北海道と旭観光株式会社との間の差止請求に関する協議が調ったことについて

差止請求詳細

事業分類

不動産業,物品賃貸業

事業者等名

旭観光株式会社

事案の内容

 本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人消費者支援ネット北海道(以下「消費者支援ネット北海道」という。)が、旭観光株式会社(以下「旭観光」という。)に対し、同社が使用する建物及び駐車場賃貸借契約書の下記条項(以下「本件条項」という。)について、消費者契約法(以下「法」という。)第8条第1項第1号及び第3号、第9条各号並びに第10条(※1)に規定する消費者契約の条項に該当し無効であるとして、下記のとおり①賃貸住宅の賃借人となる消費者との間において、賃貸住宅及び駐車場の賃貸借契約を締結するに際し、本件条項を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示を行わないようにすることを求め、②本件条項が記載された契約書ひな形が印刷された契約書用紙及び同契約書ひな形の電磁的記録を廃棄するよう求めた事案である。

ア 本件条項
(1) 賃貸借期間の満了・解約・解除・その他により本契約が終了した日の属する月における賃貸借期間が1か月に満たないときの賃料及び共益費の精算は、1か月分を支払うものとする。(第5条第2項)
(2) 甲の請求に基づく諸料金、附加使用料金については、甲の定める期日までに支払がない場合、甲がその供給を即時停止することを乙は承諾するものとする。(第6条第2項及び第3項)
(3) 賃料及び共益費について、賃貸借期間中であっても、法令の改正や経済情勢の変動、設備及び施設の改造・新設・その他負担増加等の場合これを改定することができ、乙は異議なくこれに応ずるものとする。(第7条)
(4) 乙が冬期間11月1日から3月末日までに退室する場合は、損料として敷金を甲が収受するものとする。(第8条第6項)
(5) 乙は、甲からの敷金の返還を受けるときは、乙が契約終了日までに使用した電気料その他の公共料金の支払済領収書を甲に提示しなければならないものとする。(第8条第8項)
(6) 乙が賃料若しくは共益費等乙の債務の全部又は一部を、甲の定める支払期日までに支払わない場合は、乙は支払期日の翌日から支払の日まで1日0.1%の割合により算定した延滞損害金を甲に支払わなければならないものとする。(第9条)
(7) 乙の訪問者等が故意又は過失により、本建物、賃貸借物件又は他の賃借人に物的(破損・故障・漏水・火災・その他)又は人的損害を与えたときは、乙は速やかにその旨を甲に連絡し、かつその請求に従い直ちに原状回復その他の方法により損害を賠償するものとする。(第12条第2項)
(8) 甲の行う維持保全に必要な工事による乙の損害及び本建物の共用部分の使用停止による乙の損害に対して、甲は一切その責めを負わないものとする。(第12条第4項)
(9) 次の各号の一に該当するときは、乙又は連帯保証人は直ちにその旨を甲に書面をもって通知しなければならないものとする。
 ⑥ 又は同居者が10日以上部屋をあけるとき。(第15条第6号)
(10)乙が次の各号の一に該当するときは、甲は乙に対し何ら通知催告をしないで本契 約を解除し、又は本契約の更新を拒絶することができるものとし、この場合、甲が損害を被ったときは、甲は乙に対して、その損害の賠償を請求することができるものとする。
 ① 入居申込書に虚偽の事項を記載し、又は不正な手段により入居したとき。
 ② 賃料、共益費又は諸料金の支払を1か月以上遅滞したとき。
 ③ 賃料、共益費又は諸料金の支払をしばしば遅滞することにより、その支払能力がないと甲が認め、かつその遅滞が本契約における甲乙間の信頼関係を害するものであると甲が認めたとき。
 ④ 仮差押・仮処分・強制執行・破産・和議・会社整理・会社更生又は解散等があったとき。
 ⑥ 第10条の規定に違反したとき。
 ⑦ 甲の承認を得ないで、第11条に規定する行為を行ったとき。
 ⑧ 第15条に規定する甲に対する通知を怠ったとき。
 ⑨ 長期不在により賃借する意思がないと甲が認めたとき。
 ⑩ 共同生活の秩序を乱すと甲が認めたとき。
 ⑪ 本駐車場に他の自動車を駐車させたとき。
 ⑫ 本駐車場内及び周辺に改造車輛等を駐車させたとき。
 ⑬ その他本契約に違反したとき。(第17条第1号ないし第4号、第6号ないし第13号)
(11)乙及び同居人が次の各号のいずれかに該当したときは、甲は何等催告を要せず、本契約を解除することができ、乙は本物件を明け渡さなければならないものとし、乙が速やかに退去しない場合、甲が強制的に乙所有の家財、動産等の搬出を行い本物件の入口の鍵を取替若しくは施錠し、乙の入室を拒絶することをあらかじめ承諾するものとする。施錠交換費用は乙が負担するものとする。
 ① 暴力団・極左・右翼・暴走族等の構成員及び関係者等であることが判明したとき。
 ② 本建物内の附帯設備若しくは敷地等に暴力団の組織・名称、活動等に関する看板・名札・写真・絵画・提灯・代紋・その他これに類する物を搬入若しくは掲示したとき。
 ③ 本建物内に暴力団・極左・右翼・暴力団等の構成員・同準構成員及び関係者等を出入りさせ、又はこれらの者を反復継統して居住させたとき。
 ④ 本建物内及び本建物に近接する場所において殺人・自殺・自殺未遂・暴行・傷害・脅迫・恐喝・器物破損・逮捕監禁・凶器準備集合・賭博・売春・ノミ行為・覚醒剤・銃刀剣・火薬類等に関する犯罪を敢行したとき。
 ⑤ 粗野又は乱暴な言動をもって、他の入居者、管理人、関係者等に迷惑・不安感・不快感を与えたとき。(第18条)
(12)本契約満了、解約又は甲の契約解除権行使によっても乙が明渡しをせず、乙及び同居人の有体動産等がある場合、甲が任意に有体動産を他に移動、処分しても乙は一切異議がないものとする。(第19条第3項)
(13)乙が1か月以上の賃料不払若しくは1か月以上の音信不通の場合、又は第18条の即時解約の場合は、甲において貸室内の一切の動産を処分できるものとし、その処分価格は古物商のつける価格とし、売却代金をもって未払賃料等を精算することとする。(第19条第4項)
(14)乙は本建物及び賃貸借物件に対して保管の責めに任ずるものとし、その維持、管理も乙が行い、内装・建具・シャワートイレ・設備機器の汚れ・破損、ガス給排水設備等の故障・つまり・凍結・結露による補修、備付けストーブの部品交換、ストーブ内部の清掃、故障修理などに要する費用は、入居期間に関係なく乙の負担とする。(第20条第2項)
(15)乙の関係者が故意過失等により本駐車場及び付帯設備又は他の車両に損害を与えたときは、乙はこれを賠償しなければならないものとする。(第22条第7項)
(16)乙の駐車すべき場所若しくはこれに至る経路等に、他の自動車等が無断若しくは違法駐車したため乙の使用が妨げられた場合においても甲は乙に対して何らの補償、損害賠償等の義務を負担しないものとする。このようなトラブルについては乙においてはまず解決に努力するものとし、それが不可能の場合には甲乙協力して善処するものとする。(第22条第8項)
(17)乙が賃料等の支払を5日以上延滞した場合、甲は本物件の入口の鍵を取替若しくは施錠し、乙の入室を拒絶することができる。乙はこれについて予め承諾し一切の異議を述べないものとする。(第23条)
(18)第17条又は第18条の規定により契約を解除されたときは、敷金を全額甲の所得とするものとする。(第27条第1項)
(19)第17条又は第18条の規定により契約を解除され、乙が賃貸住宅を退去する場合、乙は甲に対し移転料、立退料、損害賠償その他一切の請求をしないものとする。(第27条第1項)
(20)第17条又は第18条の規定により契約を解除され、乙が賃貸住宅を退去すべき場合にこれを明け渡さないときは、ガス・水道の元栓を閉栓されても異議がないものとし、甲は直ちに明渡しを執行することができるものとする。また、乙が不在であってしかも何等の連絡の方法もないときは、甲は第三者の立会いを以て賃貸住宅の乙の荷物を他所に移転保管することができるものとし、乙はこれに対して異議はないものとする。(第27条第1項)
(21)第17条又は第18条の規定により契約を解除され、乙が賃貸住宅を退去すべき場合にこれを明け渡さない場合、明渡しに要した費用(裁判費用、弁護士費用、運送料、荷物運搬人日当、荷物保管料、原状回復工事費等)はすべて乙の負担とする。(第27条第1項)
(22)乙は原状回復義務に伴い、明渡し時に内装の床・壁・天井の汚れ(結露によるシミ、クロスのはがれ等含む)については、貼り替えるものとする。(第19条第2項)
(23)別紙の別表記載の修繕については、入居中及び退去時に借主が修繕義務を負い、全額借主の負担で修繕しなければならないものとする。(確認承諾書 柱書)
(24)別紙の別表に記載する以外にも、借主の故意・過失による汚損、破損箇所があれば、全額賃借人の負担とする。(確認承諾書 [注1])
(25)畳は退去時に必ず表替をし、その費用は全額借主の負担とする。(確認承諾書 [注3])
(26)次に掲げる事例は、「経年変化」「自然損耗」にならず、借主の負担とする。
 ③ 重量物の設置による畳・床材等のへこみ
 ⑤ 電気焼け(冷蔵庫のうしろ等)(確認承諾書 [注4])
(27)退去の際、室内の傷の修理、交換などペットによる全ての損料は借主の負担とする。(確認承諾書 [注9])

イ 理由
(ア)上記 ① について
 1 上記(1)の条項は、賃貸借契約が終了し賃借人の対象物件に対する使用収益権が消滅した以降の期間分についても賃料等の支払義務を負担させるものであり、賃料等の日割計算を定めた民法第89条第2項の適用による場合に比して消費者の義務を加重するものであり、かつ、事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 2 上記(2)の条項は、当事者の一方が債務を履行しない場合における相当期間を定めた催告による契約の解除を定めた民法第541条の適用による場合に比して消費者の権利を制限するものであり、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 3 上記(3)の条項は、建物の借賃が不相当となった場合の借賃増減権や借賃の増減額について当事者間に協議が調わなかった場合の支払及び請求を定めた借地借家法第32条第1項の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又はその義務を加重するものである。さらに、賃貸借期間中であっても、賃貸人が賃料等を一方的に改定できるものとし、それに対して賃借人が金額改定の正当性を争う機会を失わせるものであること及び事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 4 上記(4)の条項は、同種の消費者契約の解除に伴い被請求人に生ずべき平均的損害を超える損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるものであり、平均的な損害を超える部分については、法第9条第1項第1号に該当し無効である。また、賃借人の敷金返還請求権を一方的に奪うものであり、民法第622条の2の適用による場合に比して消費者の権利を制限するものであること及び事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 5 上記(5)の条項は、民法第622条の2の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又はその義務を加重するものであり、かつ、賃借人は賃借物返還後も敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃貸人に対する金銭債務の額を控除した残額について、契約終了日までに使用した電気量その他の公共料金の領収書を賃貸人に提示することができない間は、その返還を受けることができないこと及び事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 6 上記(6)の条項は、金銭支払義務の不履行に対する損害賠償の額を予定する条項であり、その額は支払期日の翌日から支払日まで、当該支払期日に支払うべき額に1日0.1%、年に換算すると36.5%の割合を乗じて計算した額と定めており、年14.6%を超える違約金の定めは当該超える部分について、法第9条第1項第2号に該当し無効である。
 7 上記(7)の条項は、民法の適用による場合に比して消費者の義務を加重するものであり、賃借人との関係性や賃借人自身の故意又は過失の有無にかかわらず、賃借人を訪問した者の行為について賃借人に対し当然に損害賠償義務を課すものであること及び事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 8 上記(8)の条項は、賃貸人の行う維持保全に必要な工事や賃貸借物件を含む建物の共用部分の使用停止に関して賃貸人の責めに帰すべき事由がある場合、すなわち賃貸人に債務不履行や不法行為がある場合においても、賃借人に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する旨を定めており、法第8条第1項第1号及び第3号に規定する消費者契約の条項に該当し無効である。
 9 上記(9)の条項は、賃借人又は連帯保証人に対し、賃借人又は同居者が10日以上賃貸借物件を不在にする旨を賃貸人に通知することを義務付けるものであり、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の義務を加重するものである。加えて、賃借人又は同居者が10日以上の期間、賃貸借物件を不在にする場合に賃借人はその旨を賃貸人に書面で通知しなければならず、連帯保証人はそうした賃借人又は同居人の行動を把握して、上記通知がなされていなければ自ら賃貸人に書面で通知しなければならないことになること及び事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 10 上記(10)① から ⑬ までの条項は、当事者相互の信頼関係の破壊が認められない場合であっても、賃貸人の無催告解除を認めるものであるから、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し、又は義務を加重するものであり、かつ、事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 11 上記(11)① から ⑤ までの条項は、民事法の一般法理に照らし、消費者の権利を制限するものであり、かつ、自力救済により司法手続を介することなく簡便に賃借人を追い出すことを目的としていることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 12 上記(12)及び(13)の条項は、上記(11)の条項と同趣旨の理由から、法第10条に該当し無効である。
 13 上記(14)の条項は、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の義務を加重するものであり、かつ、民法上、賃借人に原状回復義務のない通常の使用及び収益によって生じた損耗や賃借人の責めに帰することができない事由により生じた損傷についてまで一律に修繕を義務付け、全ての費用を賃借人に負担させるものであり、著しく不当であること及び事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 また、賃貸人に賃貸借物件内の設備及び器具等の維持、管理などについて債務不履行や不法行為がある場合においても、賃借人に生じた損害を賠償する責任の全部を免除するものであり、法第8条第1項第1号及び第3号に規定する消費者契約の条項に該当し無効である。
 14 上記(15)の条項は、一律に「関係者」による行為についてまで賃借人に損害賠償責任を負わせるものであり、債務不履行による損害賠償を定めた民法415条の適用による場合に比して消費者の義務を加重するものであり、かつ、民法上、賃借人に支払義務のない損害賠償を義務付けるものであり、著しく不当であること及び事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 15 上記(16)の条項は、賃貸人の賃借物を賃借人に使用及び収益させる義務の不履行により賃借人に生じた損害を賠償する責任の全部を免除するものであり、法第8条第1項第1号に該当し無効である。
 16 上記(17)の条項は、民事法の一般法理に照らし消費者の権利を制限するものであり、かつ、賃貸借契約が解除されていない時点では賃貸借物件から締め出される理由はなく、これは賃借人に不法行為を受容することを強制するものであり著しく不当であること及び事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 17 上記(18)の条項は、金銭の給付を目的とする債務の有無にかかわらず賃借人に敷金返還請求権を放棄させるものであり、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限するものであり、かつ、消費者が自らの被る経済的不利益の金額を予期することができないまま契約を締結しなければならない不当性の大きいものであること及び事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 18 上記(19)の条項は、事業者である賃貸人の債務不履行や不法行為により消費者である賃借人に損害が生じた場合であっても、その賠償責任の全部を免除する契約条項であるから、法第8条第1号及び第3号に規定する消費者契約の条項に該当し無効である。また、賃借人の必要費償還請求権や有益費償還請求権を含む、あらゆる権利を放棄させるものであり、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限するものであり、法第10条に該当し無効である。
 19 上記(20)の条項は、自力救済を禁止する民事法の一般法理に反するものであるから、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限するものであり、かつ、賃借人に対して賃貸人による権利侵害、不法行為を受容することを強制するものであり、著しく不当であること及び事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 20 上記(21)の条項は、賃借人が負担する義務のない費用を一方的に負わせる内容であり、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の義務を加重するものであり、かつ、消費者が自らの被る経済的不利益の金額を予期することができないまま契約を締結しなければならない不当性の大きいものであること及び事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 21 上記(22)から(25)までの条項は、賃借人の原状回復義務を定めた民法621条の適用による場合に比して消費者の義務を加重するものであり、かつ、投下資本の減価回収は、通常、賃料に含められていることからすると、賃借人に二重の負担を課すものであること及び事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 22 上記(26)の条項は、民法621条の適用による場合に比して消費者の義務を加重するものであり、かつ、適切な情報提供がなされているとは言い難く賃借人の利益を一方的に害すること及び事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。
 23 上記(27)の条項は、民法621条の適用による場合に比して消費者の義務を加重するものであり、かつ、賃貸人と賃借人間の費用負担の配分について合理性を欠くこと及び事業者と消費者の間には、賃貸借契約の締結に関して構造的な交渉力の格差があることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条に該当し無効である。

(イ)上記 ② について
 消費者契約を締結するに際し、被請求人により、消費者との間で法第8条から第10条までに規定する消費者契約の条項を含む消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示が行われるおそれがあることから、法第12条第3項の定める除去措置及び予防措置を求める。

(※1)消費者契約法
(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)
第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
 一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
 二 [略]
 三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消 費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
 四 [略]
2 [略]

(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
 一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
 二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効等)
第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

(注)上記差止請求が行われた日現在の規定

差止請求根拠条文

消費者契約法第8条第1項第1号、消費者契約法第8条第1項第3号、消費者契約法第9条第1号、消費者契約法第9条第2号、消費者契約法第10条

結果

 消費者支援ネット北海道は、令和4年7月19日、旭観光に対する申入れを開始し、同社により申入れの趣旨に沿う対応がなされたものとして、令和6年4月1日、申入れを終了した。

当該裁判の主たる争点

-

参考資料

-

判決日・事案終了日

令和6年4月1日

ステータス

終了

適格消費者団体

消費者支援ネット北海道

お問い合わせ先

011-221-5884

その他

-

消費者庁公表資料

この事案の経過