消費者支援かながわとワンニャンハウス株式会社との間の訴訟に関する判決について

差止請求詳細

事業分類

卸売業,小売業

事業者等名

ワンニャンハウス株式会社

事案の内容

 本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人消費者支援かながわ(以下「原告」という。)が、ワンニャンハウス株式会社(以下「被告」という。)に対し、被告がペットの売買契約を締結する際に利用する売買契約書の条項(以下「本件条項」という。)について、消費者契約法(以下「法」という。)第8条、第8条の2、及び第10条(※1)に規定する消費者契約の条項に該当し無効であるとして、本件条項を含む契約の申し込みや承諾の意思表示を行うことの停止等を求めた事案である(令和5年3月31日付で横浜地方裁判所に対して訴訟を提起)。

(※1)消費者契約法
(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)
第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
 一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
 二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項
三・四 [略]
2・3 [略]

(消費者の解除権を放棄させる条項等の無効)
第八条の二 事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させ、又は当該事業者にその解除権の有無を決定する権限を付与する消費者契約の条項は、無効とする。

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

注)上記の訴訟が提起された日現在の規定

差止請求根拠条文

消費者契約法第8条第1項第1号、消費者契約法第8条第1項第2号、消費者契約法第8条の2、消費者契約法第10条

結果

 横浜地方裁判所は、令和7年12月3日、以下のように判断した上で、原告の請求を認容した。

当該裁判の主たる争点

ア 本件における主たる争点
 本件条項が法第8条第1項第1号、第2号、第8条の2又は第10条に当たるかどうか。
イ 裁判所の判断
(ア)法第8条の2該当性について
 取引の一般通念に従って客観的にみた場合、ペットの売買の場面においては当該ペットと同種・同質のペットを観念することはできることから、ペットは代替物と解される。
 そのため、被告が買主に対してペットを引き渡した時点で、当該ペットに障害や疾患があった場合、被告は買主に対して契約不適合責任を負い、買主は債務不履行に基づく解除権を行使し得るところ、一定条件の下で代替保証等を認めるものの買主の返品による返金はしない旨を定める条項は、被告の債務不履行により買主に生じた解除権を放棄させる規定といえることから、法第8条の2に該当する。
(イ)法第8条第1項第1号該当性について
 被告が販売したペットが病死した場合、被告に債務不履行がある場合であっても、同価格程度の犬(猫)と代替保証すること以外の責任を負わない旨を定める条項は、被告の債務不履行により買主に生じた損害を賠償する責任の全部を免除するものといえ、法第8条第1項第1号に該当する。
 また、被告が販売したペットに、購入日から3か月以内に飼育上重大な支障をきたす先天性障害があることが判明した場合や、門脈シャント・猫伝染性腹膜炎(FIP)の発病があった場合、獣医師が作成した明らかに被告が起因となる疾病と証明した診断書及び治療明細書の提出がなければ、被告に債務不履行がある場合であっても一切責任を負わない旨を定める条項は、被告の債務不履行により買主に生じた損害を賠償する責任の全部を免除するものといえ、法第8条第1項第1号に該当する。
(ウ)法第8条第1項第2号該当性について
 被告が販売したペットについて、買主に診断書代金等の損害が生じた場合であっても、被告の故意又は重大な過失の有無を問わず被告が賠償責任を負わない旨を定めた規定、被告が販売したペットの病気が人などに感染した場合に治療費等の損害が生じた場合であっても被告の故意又は重大な過失の有無を問わずに被告が賠償責任を負わないことを定めた規定は、事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項であり、法第8条第1項第2号に当たる。
(エ)法第10条該当性について
a. 法第10条は、消費者契約の条項が、ⅰ)任意規定によれば消費者が本来有しているはずの権利を制限し、又は任意規定によれば消費者が本来負うことになる義務を加重している場合(すなわち、任意規定から消費者に不利な方向に乖離している場合)であって、かつ、ⅱ)当該契約条項の援用によって、民法第1条第2項で規定されている信義則に反する程度に一方的に消費者の利益を侵害する場合(すなわち、当該乖離が消費者契約において具体化される民法の信義則上許容される限度を超えている場合)に、当該契約条項を無効とするものである。そして、ⅱ)信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるか否かは、法の趣旨、目的(法1条参照)に照らし、当該条項の性質、契約が成立するに至った経緯、消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考量して判断されるべきである。
b. 被告が店舗において販売するペットは代替物であるから、当該ペットに病気がある場合、その治療は売買の目的物を契約内容に適合させる修補と解され、買主は被告に対して修補請求権を有すると考えられる。
 したがって、被告が買主に引き渡したペットが契約内容に適合しない場合、買主は、民法第562条の追完請求権(代替物の引渡請求権、修補請求権)、民法第563条第1項の代金減額請求権及び民法第564条(541条、542条)の解除権を行使し得る。また、その病気が治療できないものである場合、修補が不能であるといえるから、買主は、民法第563条第2項第1号により、代金減額請求権を行使できる。
 本件の代替物の引渡請求権の行使期間を購入日より1年以内に制限するとともに、修補請求権・代金減額請求権及び解除権の行使自体をできなくする旨の条項は、民法第566条において、買主が目的物の不適合を知った時から1年以内は、種類又は品質に関する目的物の不適合を理由として、履行の追完請求、代金減額請求及び契約の解除をすることができる旨定めていること、売主が目的物の不適合につき悪意であるか、又は重大な過失によって目的物の不適合を知らなかったときは期間制限もないとしていることに比して、消費者の権利を制限する条項である。
 また、法の趣旨及び目的に照らし、前記規定は代替物の引渡請求権の行使期間を制限し、修補請求権等の行使をできなくするなど、消費者の権利を制限するものであること、同規定により買主が受ける不利益等を総合考慮すると、同規定は、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものといえる。
したがって、民法の適用による場合に比して消費者の権利を制限し、消費者の利益を一方的に害するものといえ、法第10条に該当する。
(オ)結論
 以上より、被告は、不特定かつ多数の消費者との間で法第8条第1項第1号、第2号、第8条の2、第10条に規定する消費者契約の条項である本件条項を含む消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を現に行い又は行うおそれがあると認められる。

参考資料

-

判決日・事案終了日

令和7年12月3日

ステータス

係争中

適格消費者団体

消費者支援かながわ

お問い合わせ先

045-349-9729

その他

-

消費者庁公表資料

この事案の経過

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