京都消費者契約ネットワークと株式会社CRAVE ARKSとの間の訴訟に関する判決について

差止請求詳細

事業分類

卸売業,小売業

事業者等名

株式会社CRAVE ARKS

事案の内容

 本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人京都消費者契約ネットワーク(以下「原告」という。)が、通信販売業等を営み、化粧品(以下「本件商品」という。)を定期購入契約で販売する株式会社CRAVE ARKS(以下「被告」という。)に対し、この契約は、申込み後、本件商品1個を初回特別価格として通常価格から約79%割り引いた額である税別1980円で、30日後に2回目として本件商品2個を通常価格から約38%割り引いた額で、その後も60日毎に本件商品2個を同額で継続して購入する内容であり、2回目分を購入せずに解約する場合には、初回特別価格と通常価格との差額を支払わなければならない条件が付されているところ、本件商品を初回限定で定価より低額で購入できるとする表示が、初回分1個の購入後は2回目分を購入しなければ、初回分につき通常価格との差額を支払う必要があるにもかかわらず、初回分1個だけを初回特別価格で購入可能であると誤認させるものであり、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)第30条第1項第2号(※)の有利誤認表示に当たるとして、上記表示を含め、被告のウェブサイトにおいて本件商品1か月分だけを税別1980円で購入可能であるかのように示す表示(別紙参照)をしてはならないことを求めた事案である(令和4年7月4日付けで京都地方裁判所に対して訴訟を提起)。

(※)景品表示法
第三十条 消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第二条第四項に規定する適格消費者団体(以下この条及び第四十一条において単に「適格消費者団体」という。)は、事業者が、不特定かつ多数の一般消費者に対して次の各号に掲げる行為を現に行い又は行うおそれがあるときは、当該事業者に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為が当該各号に規定する表示をしたものである旨の周知その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。
 一 [略]
 二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示をすること。
2・3 [略]

(注)上記の訴訟が提起された日現在の規定

差止請求根拠条文

不当景品類及び不当表示防止法

結果

 京都地方裁判所は、令和5年8月30日、以下のように判断した上で、原告の請求を棄却した(原告は、令和5年9月7日付けで大阪高等裁判所に控訴した。)。

当該裁判の主たる争点

ア 主たる争点
 ⅰ)有利誤認表示該当性の判断基準
 ⅱ)有利誤認表示該当性

イ 主たる争点についての裁判所の判断の概要
【争点ⅰ】
 景品表示法の表示規制が、商品等の取引に関連する不当な表示による顧客の誘因を防止するため、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護するためのものであること(第1条参照)に鑑みれば、商品の価格その他の取引条件について、実際のものよりも「取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示」(第30条第1項第2号)とは、健全な常識を備えた消費者であるところの一般消費者の認識を基準として、社会一般に許容される誇張の程度を超えて商品等の有利性があると誤って認識される表示をいうと解するのが相当である。
 そして、当該表示から一般消費者に認識される意味内容を検討するに当たっては、当該表示がインターネット上に存在し、スマートフォンやパソコン等の画面において表示されることから、文言や文字等の体裁のみならず、画面の遷移等も含め、当該表示を総合的に考慮して判断すべきである。
【争点ⅱ】
 被告のウェブサイトのランディングページ上から本件商品を購入する場合については、申込みをするまでに、「定期通販」、「定期コース」、「ご解約の連絡をいただくまで継続する期限の定めのない契約」といった定期購入契約であることを直接示唆する表示に、複数回接するのであり、これらを全て見落として、定期購入契約でないと認識する可能性は低いといえる。そして、初回1か月分のみを利用し、2回目以降の分を解約する場合の条件についても、いずれも色文字によって強調された表示に4回接するのであり、上記条件について、容易に認識できるといえる。
 チャットボット内から購入する場合についても、チャットボットを起動する前にランディングページ上で定期購入契約であることを示す表示に触れる可能性があるうえ、チャットボット内においても、「注文内容の最終確認」欄において、「定期コース」と定期購入契約であることを直接示唆する見出しや、初回、2回、3回目以降の料金及び発送時期など定期購入契約であることを直接示唆する記載があり、この欄の直下にも、「定期コース」と赤色文字の記載があり、これらを全て見落として、定期購入契約でないと認識する可能性は低い。そして、初回1か月分のみを利用し、2回目以降の分を解約する場合の条件についても、色文字によって強調された記載があり、その直下で、解約条件・手続についての確認を促しているのであって、上記条件について、一般消費者をして、容易に認識できるといえる。
 以上によれば、被告が口頭弁論終結時点で行っている表示は有利誤認表示に該当しない。

ウ 結論
 よって、原告の請求はいずれも理由がないから棄却する。

参考資料

判決日・事案終了日

令和5年8月30日

ステータス

終了

適格消費者団体

京都消費者契約ネットワーク

お問い合わせ先

075-211-5920

その他

-

消費者庁公表資料

この事案の経過