消費者支援ネットくまもとと株式会社渕上ファインズとの間で差止請求に関する協議が調ったことについて

差止請求詳細

事業分類

不動産業,物品賃貸業

事業者等名

株式会社渕上ファインズ

事案の内容

 本件は、適格消費者団体であるNPO法人消費者支援ネットくまもと(以下「消費者支援ネットくまもと」という。)が、株式会社渕上ファインズ(以下「渕上ファインズ」という。)に対し、渕上ファインズが運営する店舗において使用する「規約書」(婚礼に関する衣装を貸し付ける等についての契約内容)の中のキャンセル料に関する条項(以下「本件条項」という。)について、消費者契約法(以下「法」という。)第9条第1号(※1)に規定する消費者契約の条項に該当し無効であるとして、下記のとおり本件条項の修正を求めた事案である。

(本件条項)【キャンセル料】
*ご契約日から8日以内に解約をする場合  ご注文金額の10%
 ただし、クレアージュリゾート提携先ドレスショップヘの変更に限り、8日以内は無料とさせていただきます。
*ご契約日9日目以降からご使用日の120日前までに解約をする場合 ご注文金額の20%
*ご使用日の119日前から90日前までに解約をする場合 ご注文金額の40%
*ご使用日の89日前から30日前までに解約をする場合 ご注文金額の60%
*ご使用日の29日前から前々日前までに解約をする場合 ご注文金額の80%
*ご使用日の前日、当日に解約をする場合 ご注文金額の100%

(理由)
 本件条項は、婚礼に関する衣装を貸し付ける契約(以下「本件契約」という。)に関し、その解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金を定める条項といえ、解除の時期等の区分に応じ、渕上ファインズに生ずべき平均的損害の額を超える違約金等を定めている場合は、法第9条第1号に該当し、平均的な損害の額を超える部分については無効となる。
 法第9条第1号にいう平均的な損害の額とは、本件契約の締結及び履行のために通常要する平均的な費用の額を指すとされており(大阪高判平成25年1月25日)、渕上ファインズの場合、この通常要する平均的な費用の額には従業員の時間外業務も含めた人件費及び衣装決定後における当該衣装のレンタル機会の喪失等が考慮されていると渕上ファインズは主張しているものの、人件費について、本件契約に基づく業務は、時間外に行わなければならない性質のものではないことから、時間外の業務を考慮した人件費に基づいてキャンセル料を設定することは、平均的な損害の額を算定する上では不適切である。
 また、衣装のレンタル機会の喪失についても、レンタル品の直接的な使用制限自体については、顧客の挙式日前後20日間にとどまることや、レンタル品の中には複数生産されている代替可能品も含まれることを踏まえると、少なくとも使用日から1年以上前のキャンセルにより渕上ファインズがレンタル機会を喪失すること、及び使用日まで1年以内の期間におけるキャンセルであったとしても、本件条項に定める額ほどの損害が発生することについては疑義がある。
 以上のことから、本件条項は、渕上ファインズに生ずべき平均的な損害の額を超える違約金等を徴求するものであり、法第9条第1号に該当し、平均的な損害の額を超える部分については無効である。

(※1)消費者契約法
(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
 一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
 二 [略]

注)上記の差止請求が行われた日現在の規定

差止請求根拠条文

消費者契約法第9条第1号

結果

 消費者支援ネットくまもとは、令和元年8月9日、渕上ファインズに対する申入れを開始し、当初は渕上ファインズの運営する1店舗のみが申入れの趣旨に沿った対応を行ったが、消費者支援ネットくまもとの更なる申入れにより、渕上ファインズの運営する全店舗について、申入れの趣旨に沿う対応がなされたものとして、令和6年9月6日、申入れを終了した。

当該裁判の主たる争点

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参考資料

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判決日・事案終了日

令和6年9月6日

ステータス

終了

適格消費者団体

消費者支援ネットくまもと

お問い合わせ先

096-356-3110

その他

-

消費者庁公表資料

この事案の経過