消費者市民ネットとうほくと株式会社ナガセとの間の差止請求に関する協議が調ったことについて

差止請求詳細

事業分類

教育,学習支援業

事業者等名

株式会社ナガセ

事案の内容

 本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人消費者市民ネットとうほく(以下「消費者市民ネットとうほく」という。)が、株式会社ナガセ(以下「ナガセ」という。)に対し、ナガセが提供する中学学習塾「東進中学NET」の契約書における、「中学学力判定テスト(年4回)」の中途解約及び模試費の返金はできないとする旨の条項(以下「本件条項」という。)について、消費者契約法(以下「法」という。)第9条第1項第1号及び第10条(※1)に規定する消費者契約の条項に該当し無効であるとして、本件条項の修正を求めた事案である。

(理由)
 中学学力判定テスト(年4回)について、任意の時期に都度又は年4回まとめて申込みができるところ、本件条項は、申込み後は解約の時期等を問わず一律に中途解約及び模試費の返金はできないと定めている。模試契約は民法上の準委任契約に該当すると思われるところ、民法第656条により準用される同法第651条第1項は、各当事者がいつでも準委任契約を解除することができると定めているが、本件条項は同権利を否定しており、同条に比して消費者の権利を制限するものであり、法第10条前段に該当する。加えて、中学学力判定テスト(4回)については、年4回のテストを任意の時期に申し込むことができるところ、本件条項は、未了分のテストの実施まで相当期間があるような場合でも一切中途解約ができないとしている点で消費者の不利益は大きく、民法第1条第2項に定める信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条後段に該当する。よって、本件条項は、法第10条に規定する消費者契約の条項に該当し無効である。
 また、解約の時期等を問わず模試費を一切返金しないとする本件条項は、解約に応じる場合でも契約金額の全額を違約金とする条項に等しく、中途解約された場合、時期によっては、実施未了のテストについてはナガセが採点業務等の業務の履行を免れることができることを踏まえると、解約の時期にかかわらず契約金額の全額についてナガセに損害が生じるとは考えられず、本件条項は、契約の解約に伴いナガセに生ずべき平均的な損害の額を超える損害賠償額を予定する条項であり、法第9条第1項第1号に該当し、平均的な損害の額を超える部分については無効である。

(※1)消費者契約法
(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
 一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
 二 [略]
2 [略]

 (消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

注)上記の差止請求が行われた日現在の規定

差止請求根拠条文

消費者契約法第9条第1項第1号、消費者契約法第10条

結果

 消費者市民ネットとうほくは、令和6年3月6日、ナガセに対する申入れを開始し、ナガセにより申入れの趣旨に沿う対応がなされたものとして、令和7年5月29日、申入れを終了した。

当該裁判の主たる争点

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参考資料

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判決日・事案終了日

令和7年5月29日

ステータス

終了

適格消費者団体

消費者市民ネットとうほく

お問い合わせ先

022-727-9123

その他

-

消費者庁公表資料

この事案の経過