消費者被害防止ネットワーク東海とミニッツラウンドゴルフ株式会社との間の差止請求に関する協議が調ったことについて

差止請求詳細

事業分類

生活関連サービス業,娯楽業

事業者等名

ミニッツラウンドゴルフ株式会社

事案の内容

 本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人消費者被害防止ネットワーク東海(以下「消費者被害防止ネットワーク東海」という。)が、ミニッツラウンドゴルフ株式会社(以下「ミニッツラウンドゴルフ」という。)に対し、ミニッツラウンドゴルフが使用するゴルフレッスンに関わるミニッツラウンドゴルフ会則の下記条項(以下「本件条項」という。)について、消費者契約法(以下「法」という。)第8条第1項第1号及び第3号、第9条第1項第1号並びに第10条(※1)に規定する消費者契約の条項に該当し無効であるとして、本件条項の修正を求めた事案である。

(本件条項)
・第6条(スクール入会金・年会費・月会費・参加費・施設使用料・その他運営ルール)
 1 スクール会員は下記に定める諸会費を本法人に納入しなければならない。
入会金:5,400円 月会費:各種定められた金額
また、退会を含むいかなる場合も、入会金、年会費、月会費等諸会費は返却しないものとする。
 6 レッスン開催日は、年間開催スケジュールに基づき開催とするが、所属コーチの試合、スタッフ手配等の影響から変更となる場合がある。その場合、対象会員には事前にメールにて連絡し、振替にて対応となる。(返金は不可)
・第10条(本法人の損害責任の免除)
 本法人は本法人の主催するスポーツ・文化事業及びイベントにおける人的・物理的事故について一切の損害賠償責任を負わないものとする。
 1 会員は、自己の責任と危険負担において活動に参加するものとする
 2 本法人は会員が活動参加中に生じた盗難・損害等の事故については、一切の責任は負わないものとする。駐車場での事故も同様とする。
 3 会員は、自己の健康管理に基づいて本法人の活動に参加するものとし、疾病の発生、悪化、その他健康上の傷害を生じた場合でも、本法人は一切の責任は負わないものとする。
・第12条(保険)(抄)
 打ちっぱなし施設利用会員は保険適用外となるため自己責任において活動し、事故発生時も、一切クラブは責任を負わない。

(理由)
・第6条第1項について
 ア 法第9条第1項第1号に該当することについて
 本件条項の第6条第1項は、退会を含むいかなる場合も入会金、年会費、月会費等を返金しないと定めているので、違約金等の定めに当たり、違約金等を解除事由や時期等にかかわらず一律に返金しないことは、ミニッツラウンドゴルフに生ずる平均的損害を超える違約金等を定めるものとして、法第9条第1項第1号に該当し、平均的な損害の額を超える部分は無効である。
 イ 法第10条に該当することについて
 ミニッツラウンドゴルフと会員との契約関係は、ゴルフのレッスン等を行う対価として会員がミニッツラウンドゴルフに会費を支払うものなので、民法上の準委任契約類似のものと考えられる。したがって、民法の規定によると、会員は、会員契約をいつでも任意に将来に向けて解除することが可能である。また、ミニッツラウンドゴルフが受任者の報酬請求権たる会費を請求できるのは、既履行の割合部分に限られるとともに(民法第648条第3項)、解除の伴う損害賠償の請求も、不利な時期においてやむを得ない事由がないにもかかわらず会員が解除した場合に限られることになる(民法第651条第2項)。そして、ゴルフレッスン等という業務の形態から、サービス期間中での解約による損害の発生を観念することは難しい。以上のことから、ミニッツラウンドゴルフは、会員が契約の解除を行う場合、会員による支払済みの会費から未履行分の役務に相当する額を返還しなければならない(民法第703条)。
 しかし、本件条項の第6条第1項は、解除事由や時期等にかかわらず一律に返金しないことを定めており、民法の規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は義務を加重するものである(法第10条前段)。さらに、第6条第1項は、上記より会員たる消費者にとって民法よりも不利な定めとして消費者の契約解除権を一方的に制限しており、信義則に反して消費者の利益を一方的に害している(法第10条後段)。以上のことから第6条第1項は、法第10条に該当し、無効である。
・第6条第6項について
 所属コーチの試合やスタッフの手配等による変更は、ミニッツラウンドゴルフの責めに帰する事由による債務不履行であるので、民法上、会員は反対給付であるスポーツ指導費用等の支払を拒むことができる(民法第536条第1項)。しかし、本件条項の第6条第6項は、振替対応にとどまり、会員への返金をしない旨を定めている。このことは、民法の規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は義務を加重するものであり(法第10条前段)、会員たる消費者の権利を一方的に制限しており、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものである(法第10条後段)。以上のことから第6条第1項は、法第10条に該当し、無効である。
・第10条第1号から第3号までについて
 本件条項の第10条柱書は、「・・・一切の損害賠償を負わないものとする。」としており、ミニッツラウンドゴルフの債務不履行や不法行為により会員たる消費者に生じた損害についても、ミニッツラウンドゴルフの損害賠償責任を免れるとする定めである。これは、事業者の債務不履行又は事業者による不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項であり、法第8条第1項第1号及び第3号に該当し、無効である。
・第12条について
 本件条項の第12条は「・・・一切クラブは責任を負わない。」としており、ミニッツラウンドゴルフの債務不履行や不法行為により会員たる消費者に生じた損害についても、ミニッツラウンドゴルフの損害賠償責任を免れるとする定めである。これは、事業者の債務不履行又は事業者による不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項であり、法第8条第1項第1号及び第3号に該当し、無効である。

(※1)消費者契約法
(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)
第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
 一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
 二 [略]
 三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
 四 [略]
2・3 [略]

(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
 一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
 二 [略]
2 [略]

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

注)上記の差止請求が行われた日現在の規定

差止請求根拠条文

消費者契約法第8条第1項第1号、消費者契約法第8条第1項第3号、消費者契約法第9条第1項第1号、消費者契約法第10条

結果

 消費者被害防止ネットワーク東海は、令和5年12月21日、ミニッツラウンドゴルフに対する申入れを開始し、ミニッツラウンドゴルフにより、申入れの趣旨に沿う対応がなされたものとして令和6年8月20日、申入れを終了した。

当該裁判の主たる争点

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参考資料

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判決日・事案終了日

令和6年8月20日

ステータス

終了

適格消費者団体

消費者被害防止ネットワーク東海

お問い合わせ先

052-734-8107

その他

-

消費者庁公表資料

この事案の経過