消費者支援ネットくまもとと有限責任事業組合熊本防災災害まちづくり機構及び同代表者組合員谷陽一郎氏との間の訴訟に関する判決について

差止請求詳細

事業分類

サービス業(他に分類されないもの)

事業者等名

有限責任事業組合熊本防災災害まちづくり機構及び同代表者組合員谷陽一郎

事案の内容

 本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人消費者支援ネットくまもと(以下「原告」という。)が、塗料の販売及び製品研究開発事業、各種防災まちづくり及び関連イベント事業等を事業内容とうたい熊本県山鹿市において整体院や飲食店を運営する有限責任事業組合熊本防災災害まちづくり機構(以下「被告組合」という。)及びその組合員であり被告組合の代表理事長を自称する谷陽一郎(以下「被告谷」という。)に対し、被告らが不特定かつ多数の消費者との間で代理店契約の申し込み及びその承諾の意思表示に利用する契約書において、消費者が契約解除及び除名となった場合に、消費者が被告らに対して支払った権利金を返還しない旨の条項(以下「本件不返還条項」という。)が消費者契約法(以下「法」という。)第9条第1項第1号及び法第10条(※1)に違反するとして、法第12条第3項に基づきその利用の停止等を求めるとともに、被告らが不特定かつ多数の消費者に対して、そのままでは先祖の因縁を断ち切ることができないとの不安をあおる等して、代理店契約(以下「本件代理店契約」という。)を締結し被告らに権利金を支払うことが必要不可欠である旨を告げる勧誘行為(以下「本件勧誘行為」という。)が法第4条第3項第8号に規定する行為に該当するとして、法第12条第1項に基づいて本件勧誘行為の差止め等を求めた事案である(令和5年12月26日付けで熊本地方裁判所に対して訴訟を提起)。

(※1)消費者契約法
(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第四条
1・2 [略]
3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対 して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
 一~七 [略]
 八 当該消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、当該消費者又はその親族の生命、身体、財産その他の重要な事項について、そのままでは現在生じ、若しくは将来生じ得る重大な不利益を回避することができないとの不安をあおり、又はそのような不安を抱いていることに乗じて、その重大な不利益を回避するためには、当該消費者契約を締結することが必要不可欠である旨を告げること。
 九・十 [略]
4~6 [略]

(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
 一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
 二 [略]
2 [略]

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

(差止請求権)
第十二条 適格消費者団体は、事業者、受託者等又は事業者の代理人若しくは受託者等の代理人(以下この項及び第四十三条第二項第一号において「事業者等」と総称する。)が、消費者契約の締結について勧誘をするに際し、不特定かつ多数の消費者に対して第四条第一項から第四項までに規定する行為(同条第二項に規定する行為にあっては、同項ただし書の場合に該当するものを除く。次項において同じ。)を現に行い又は行うおそれがあるときは、その事業者等に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為に供した物の廃棄若しくは除去その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。ただし、民法及び商法以外の他の法律の規定によれば当該行為を理由として当該消費者契約を取り消すことができないときは、この限りでない。
2 [略]
3 適格消費者団体は、事業者又はその代理人が、消費者契約を締結するに際し、不特定かつ多数の消費者との間で第八条から第十条までに規定する消費者契約の条項(第八条第一項第一号又は第二号に掲げる消費者契約の条項にあっては、同条第二項の場合に該当するものを除く。次項及び第十二条の三第一項において同じ。)を含む消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を現に行い又は行うおそれがあるときは、その事業者又はその代理人に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為に供した物の廃棄若しくは除去その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。ただし、民法及び商法以外の他の法律の規定によれば当該消費者契約の条項が無効とされないときは、この限りでない。
4 [略]

注)上記の訴訟が提起された日現在の規定

差止請求根拠条文

消費者契約法第4条第3項第8号、消費者契約法第9条第1項第1号、消費者契約法第10条、消費者契約法第12条第1項、消費者契約法第12条第3項

結果

 熊本地方裁判所は、令和7年12月5日、以下のように判断した上で、原告の請求を一部認容した(本判決は既に確定している。)。

当該裁判の主たる争点

ア 争点
① 被告組合が本件不返還条項を含む本件代理店契約の締結を現に行い又は行うおそれがあるか
② 本件不返還条項が法第9条第1項第1号又は法第10条に規定する条項に該当するか
③ 被告らが、本件代理店契約の締結の際、本件勧誘行為を現に行い又は行うおそれがあるか
④ 本件勧誘行為が法第4条第3項第8号に規定する行為に該当するか

イ 裁判所の判断
① 被告組合が本件不返還条項を含む本件代理店契約の締結を現に行い又は行うおそれがあるか
 被告らは、本件不返還条項を含む本件代理店契約の締結は被告谷が個人として締結していたものであり、被告組合の名称使用は被告谷の肩書きに過ぎないことから、本件差止請求の相手方とならない旨の主張をする。
 もっとも、契約書のひな形に契約当事者として被告組合の記載が不動文字で印字されていることや、その他の契約書の内容、被告谷が被告組合の組合員であり被告組合の代表理事長を自称していること等を踏まえれば、被告組合が本件不返還条項を含む本件代理店契約の締結を行っていると認められる。また、本件代理店契約の締結が被告谷により行われており、被告らも被告谷個人により本件代理店契約が締結され得ることを否定していないことに照らせば、被告谷個人についても、事業として本件不返還条項を含む本件代理店契約の締結を行うおそれがあると認められる。したがって、被告らは、いずれも本件差止請求の相手方となる。
② 本件不返還条項が法第9条第1項第1号又は法第10条に規定する条項に該当するか
(ア)本件権利金の性質
 原告は、本件における権利金(以下「本件権利金」という。)は、契約終了時に出資者に返還される保証金としての性質を有するものと主張するが、本件権利金について本件ひな形上「第6条(権利金)」との見出しの下「代理店業務を行う権利金」との文言が用いられていることや、代理店において支払うべき料金を滞納した場合等の填補を目的とするものであることを明示する条項が見当たらないこと等からすると、本件代理店契約において消費者が被告組合の代理店としてその事業を経営する権利を得ることの対価としての性質を有するものと一応は解されることから、本件権利金は原告が主張するような保証金としての性質を有するものとは解されない。
(イ)法第10条に規定する条項該当性
 本件権利金の性質について、代理店業務を行う権利を得ることの対価の意味合いは判然とせず、代理店の権利の対価としては、別途ロイヤルティの支払義務が定められている。
 この点について、本件代理店契約においてうたわれている被告組合の事業の中には、単なる事業コンセプトの域を出ない事業計画に係る事業が含まれており、当該事業コンセプトが現実化していることをうかがわせる証拠等が見当たらない本件においては、少なくとも当該事業に係る役務の提供等を被告らから受けることは考えにくく、その対価とみることは困難である。また、被告組合が行う事業についても、被告組合が、本件代理店契約を締結した消費者に対し、割り当てた特定の地域内において被告組合が行う事業の代理店としてその運営をさせるべく役務の提供等をしたことはうかがわれず、現時点において300万円という本件権利金の支払によって代理店となった消費者が得られる被告組合の事業に係る役務の提供等を独占的に受けることの対価性を見いだすことは困難である。
 そのため、仮に本件代理店契約が消費者により解除された場合、本件不返還条項がなければ、民法第545条に照らし、本件権利金は返還されるのが通常であると解される。
 また、本件代理店契約の性質として、事業者の代理店に対する継続的な役務の提供関係が形成されると解したとしても、このような場合における解除の効力は将来に向かってのみ生じ得ると考えられることからすると、本件不返還条項がなければ、本件権利金のうち少なくとも契約の残存期間に相当する部分については返還されるべきものと解される。
 そうすると、本件不返還条項は、本件代理店契約が消費者により解除された場合に、その時期及び理由を問わず、本件権利金を消費者に対して一切返還しないとするものであって、任意規定の適用による場合と比して消費者の権利を制限するものといえる。
 そして、ⅰ)本件代理店契約の契約期間は1年間にすぎず、本件権利金とは別にロイヤルティの支払義務も課せられていること等からすると、個人たる消費者にとって300万円という本件権利金の額は著しく高額であること、ⅱ)消費者において、本件代理店契約を解除して当該契約関係を解消したい場合でも、本件不返還条項の存在により、その解除を躊躇せざるを得ず、実質的に解除権の行使が制限されることとなるのに対し、被告らは、消費者からの解除によっても本件権利金を全額取得できること、ⅲ)本件代理店契約においては、少なくとも被告組合によるその事業に関する知識・ノウハウの提供等、一定の役務の提供が予定されているところ、被告らが消費者に対し、本件代理店契約に基づく上記役務の提供等をしていることはうかがわれず、そうであるにもかかわらず、被告らは、本件代理店契約の締結によって本件権利金を取得でき、かつ、本件不返還条項により、時期・理由の一切を問わずその返還を要しないこととされること、ⅳ)被告らが消費者に対し、本件代理店契約の締結に当たり、本件不返還条項の内容を十分に説明したことはうかがわれず、消費者において本件不返還条項の存在による自己の不利益の大きさ等を的確に認識した上で本件代理店契約を締結したことはうかがわれないことから、本件不返還条項は、消費者に著しい不利益を及ぼして当事者間の衡平を害するものであり、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものと認められる。
 よって、本件不返還条項は、法第10条に規定する条項に該当する。
(ウ)法第9条第1項第1号に規定する条項該当性
 本件代理店契約における被告らの事業コンセプトの内容や代理店に対する役務の提供状況等に照らすと、本件不返還条項については、契約期間の途中に契約解除又は除名がされた場合の損害賠償額の予定又は違約金の定めの性質も有するものと解され、かつ、契約期間の途中に契約解除又は除名がされた場合において、直ちに被告らに本件代理店契約に関する損害が発生するとは考えにくく、そのような場合、被告らの平均的な損害の発生を認めることは困難である。
 したがって、本件不返還条項は、その全体が法第9条第1項第1号に該当する。
③ 被告らが、本件代理店契約の締結の際、本件勧誘行為を現に行い又は行うおそれがあるか
 被告らは、家系図作成契約及び本件代理店契約は、いずれも被告谷が個人として締結しているものであり、被告組合は本件代理店契約締結の勧誘を行っておらず、これを行うおそれもないこと、本件代理店契約の勧誘は、家系図作成契約の締結とは無関係であり、被告谷は代理店説明会ではもとより、本件代理店契約を締結するに当たり、ご先祖様の解放のために代理店契約が必要であるなどとは一切述べていないと主張する。
 もっとも、被告谷が代理店説明会で同趣旨の発言をしていることや、被告谷が、代理店契約勧誘とは別の機会の発言であるとするものの、同趣旨の発言をしていたことを認めていること等からすれば、被告らが消費者に対し、本件代理店契約の締結の際、消費者やその家族の健康上の問題が先祖の因縁によるものであり、そのままでは先祖の因縁を断ち切ることができないとの不安をあおり、当該消費者がそのような不安を抱いていることに乗じて、先祖の因縁を断ち切るためには、本件代理店契約を締結し本件権利金を被告らに支払うことが必要不可欠である旨を告げる勧誘を、現に行い又は行うおそれがあると認められる。
④ 本件勧誘行為が法第4条第3項第8号に規定する行為に該当するか
 本件勧誘行為は、自身や家族の健康上の問題を抱える消費者に対し、被告らが、当該消費者の抱える問題が先祖の因縁によるものであり、そのままでは先祖の因縁を断ち切ることができないとの不安をあおり、当該消費者がそのような不安を抱いていることに乗じて、先祖の因縁を断ち切るためには、本件代理店契約を締結し本件権利金を被告らに支払うことが必要不可欠である旨を告げて、本件代理店契約の締結を勧誘することがあるというものである。
 このような当該消費者の抱える問題が先祖の因縁によるものであるとする点や、先祖の因縁を断ち切るためには本件代理店契約を締結し、本件権利金を支払うことが必要不可欠であるとする点は、いずれも合理的に実証することが困難であると解され、本件においてこれを覆す証拠等は見当たらない。
 したがって、本件代理店契約の締結に際し、本件勧誘行為による勧誘がされる場合において、消費者が現在抱える問題が先祖の因縁によるものであるとする点は、霊感等の合理的実証が困難な特別な能力による知見として、消費者及びその親族の生命、身体、財産等に関し、そのままでは現在生じ又は将来生じ得る重大な不利益を回避することができないとの不安をあおるものといえる。また、先祖の因縁を断ち切るためには本件代理店契約を締結し、本件権利金を支払うことが必要不可欠であるとする点は、霊感等の合理的実証が困難な特別な能力による知見として、前記のとおり不安をあおり、又は消費者がそのような不安を抱いていることに乗じて、その重大な不利益を回避するためには、本件代理店契約を締結することが必要不可欠である旨を告げるものといえる。
 よって、本件勧誘行為は、法第4条第3項第8号に規定する行為に該当する。

ウ 結論
 以上のとおり、被告らは、不特定かつ多数の消費者に対し、法第10条又は法第9条第1項第1号に規定する条項に該当する本件不返還条項を含む消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示及び法第4条第3項第8号に規定する行為に該当する本件勧誘行為を、いずれも現に行い又は行うおそれがあると認められ、原告は、被告らに対して、当該行為の停止若しくは予防に必要な措置等をとることを求めることができる。
 他方、原告は、被告らに対し、上記予防措置として、被告組合の従業員をして本件不返還条項を用いないこと及び本件勧誘行為をしないことの周知、本件勧誘行為を記載した文書及び図面の破棄も求めているが、本件において、被告組合に従業員がいること及び消費者が被告組合の従業員から勧誘を受けるなどしていることを認めるに足りる証拠はない。また、本件勧誘行為に文書や図面が用いられたことや、被告らが本件勧誘行為を記載した文書や図面を所持していることを認めるに足りる証拠はなく、そもそも原告が被告らに対して破棄を求める対象も特定されていないことから、原告の請求のうち、被告組合の従業員への周知等を求める部分については認められない。

参考資料

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参考資料ファイル名

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参考資料表示名

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終了日・判決日

令和7年12月5日

ステータス

終了

適格消費者団体

消費者支援ネットくまもと

お問い合わせ先

096-356-3110

その他

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消費者庁公表資料

この事案の経過