消費者支援ネットワークいしかわと株式会社福邦銀行との間の差止請求に関する協議が調ったことについて

差止請求詳細

事業分類

金融業,保険業

事業者等名

株式会社福邦銀行

事案の内容

 本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人消費者支援ネットワークいしかわ(以下「消費者支援ネットワークいしかわ」という。)が、株式会社福邦銀行(以下「福邦銀行」という。)に対し、同行の総合口座取引規定(以下「本件規定」という。)第9条第1項第2号(以下「本件条項」という。)が、以下のとおり消費者契約法(以下「法」という。)第10条(※1)に規定する消費者契約の条項に該当し無効であるとして、本件条項の削除又は修正を求めた事案である。

(本件条項)
 9.(即時支払)
(1)次の各号の一にでも該当した場合に貸越元利金等があるときは、当行からの請求がなくても、それらを支払ってください。
① [略]
② 相続の開始があったとき
③・④ [略]

(理由)
 本件規定第6条は、定期預金を担保とした当座貸越(預金者が福邦銀行から金銭を借り受けることができる旨)を規定している。
 本件条項は、相続の開始のみを理由として預金者の相続人が期限の利益を失う旨を規定しているところ、民法第896条本文は「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」と定めており、また、同法第137条は、相続の開始を期限の利益喪失事由として定めていないから、本件条項は同法の適用による場合に比して、消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重するものである。
 そして、本件条項が適用された場合、期限の利益を失った相続人は、定期預金を解約して、相続債務を一括返済する義務を負うとともに、債務不履行に対する損害金として年14%の割合による損害金を支払う義務を負うこととなるため(本件規定第8条第3項)、相続人は、自らの意思にかかわりなく定期預金契約を解約され、その上、高率の損害金を支払うことになるという財産上の不利益を被る。他方、福邦銀行は、定期預金を担保としていることから、回収不能リスクを負わない。以上からすれば、相続の開始という事由のみで期限の利益を一律に失わせ、直ちに債務の履行を求めることを可能とする本件条項は、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるから、法第10条に該当し無効である。

(※1)消費者契約法
(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

(注)上記差止請求が行われた日現在の規定

差止請求根拠条文

消費者契約法第10条

結果

 消費者支援ネットワークいしかわは、令和5年9月7日、福邦銀行に対する申入れを開始し、同行により申入れの趣旨に沿う対応がなされたものとして、令和6年3月19日、申入れを終了した。

当該裁判の主たる争点

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参考資料

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判決日・事案終了日

令和6年3月19日

ステータス

終了

適格消費者団体

消費者支援ネットワークいしかわ

お問い合わせ先

076-254-6733

その他

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消費者庁公表資料

この事案の経過